ちぇっくめいと



「あ、シリウス。」
「あ、お、おかえりなさいませシリウス様っ!!

仕事をしているのだか遊んでるんだか良く解らないが、取り合えず本職である筈の 視察を終え、執務室へ戻ってきたシリウスは可愛らしい客人の姿に笑顔を浮べた。

「おやおや、珍しいですね。貴方が私を訪ねてくるなんて。」

普段は何時もシリウスの方から魔法院まで出頭しているからである。 それもこれもアクアの嫌がる顔を見る為だと言うのだから救いようがない。

「それにしても、私の部下と何をやってるんです?」

アロランディアの民とは基本的に係りを持とうとしないシリウスの部下たちだが、 何故かアクアにだけは友好的だ。大部分は、風の魔法でシリウスを助けた事にあるのかもしれないが、 それにしても良く打ち解けている。

「チェス。シリウスが、もどってこないから・・・あいてしてもらったの。」
「君は随分とチェスが気に入ったみたいだね。」

チェスは、数日前にシリウスがアクアに教えたゲームだ。ダリスでは、王宮内、特に貴族階級の 男性が好む室内遊戯であるが、アクアはそれを大層気に入った模様で、ここ数日毎日の様に 遊びに来ているのだった。

「いやはや、しかし流石はアクア様。賢くていらっしゃる!もう私なぞでは相手になりませんな。」
「そうね・・・ぼろまけだもの・・・わたし、ごれんしょう。」
「うぐっ・・・お、お恥ずかしいかぎりです。」

大人に言われれば癪に障る直球な台詞でも、アクアが言うと怒る気にはなれない。 子供の特権と言う奴だろう。

「これで、かってないのは、シリウスだけだよ。」
「っと言う事はもう全員と遊んで来たんですか?」
「うん・・・。アークには、苦戦した・・・。ふかく。」

そういって悔しそうに顔を顰めても、やっぱりアクアは可愛らしくて、 シリウスの部下たちさえも構いたくなってしまうのは頷けるというものだった。

「だから、あそんで・・・・?。」
「・・・・・・」
「シリウス〜?」
「・・・感動っ!!感動だよっ!!君から誘われるなんてっ!!」

ドカッ!!

「はんざいしゃ!変ないいかたしないで。」

急にがばりと抱きついてきたシリウスに、容赦なくアクアの鉄拳が飛ぶ。珍しく 普通かと思いきや、直この男は・・・・。

「いたっ、本当に乱暴だなぁ。君は。」
「カワイイノニネー。」
「あなたに褒められても、うれしくないわ。あそぶの?あそばないの?」
「はいはい、お相手いたしましょう。姫君。」

むくれるアクアの頭を撫ででから、シリウスは向かい合わせに座った。 部下の一人が、かいがいしく紅茶を運んでくる。勿論、アクアにはミルクだ。


---------−−−−−


「・・・・・・・・まけた。」

その一時間後。暫くボードを見詰めていたアクアは、悔しそうに溜息を吐いた。

「おや?もう諦めてしまうんですか?」

実際チェックになるまで、可也の道のりはあるように思える。だが、シリウスの 楽しそうな声に、アクアはむっと顔を顰めた。

「・・・5ターン後には、ぜったい負けるわ。」

解っている癖に聞くのがこの男の嫌な所だ。

「おやおや・・・・。でも、私が必ずしも最良の道を選ぶとは、限らないでしょう?」
「・・・あなたにかぎって、それはないでしょう?」

そして、わたしも、まだまだね・・・。っと残念がるアクアに、シリウスの笑みが深まった。 なんだかんだ嫌がっても、アクアは一番シリウスを理解しているのだ。 けれど、それを厭く思わない自分に、少しだけ戸惑もあって。

隠し事ができないのは、都合の悪い事だから。

「あはは、でも、強くなりましたね〜。此処まで長期戦に持ち込まれたのは、久しぶりですよ。 星の娘なんか止めて、参謀にでもなった方が良いんじゃないかな?」

飾りだけの存在にするには、勿体無い。そう付け足すシリウスを、アクアはじっと凝視した。 シリウスは、星の娘を良く思っていない。いや、信じていないと言った方が正しいのだろうか。 星の娘「なんか」と言った時点で、既に確証済みかもしれないが、事あるごとに、 違う職を勧めて来るのが良い証拠だ。が、聞いた所で、本当の答えなど返って来ない事は解りきっているので、アクアは別の 話題を取る事にした。

「五分五分のちからなら・・・ひとは、いくさなどしないでしょう?」

淡々と放たれた台詞に、シリウスは、驚いて瞳を見開く。
まさか、こう返されるとはね。
だが、勝てる戦以外はしない・・・それは、軍事の基本だ。

「・・・・・・・・・君は、本当に賢いなぁ。」

「それに、このゲームには、かけているものがあるわ・・・。」
「・・・・・・」

アクアの秀麗な紫銀の瞳は、まっすぐ自分を捕えていて。
戦慄がはしる程の強い眼差しに、シリウスは思わず言葉を失った。


「・・・・・・まほうつかいが、いないものね・・・・・?」



シリウスが表情を変えるのが速いか、アクアが席を立つのが速いか。 彼の動揺などまったくもって興味が無いかの如く、アクアは踵を返す。 そして、扉を出る前に、振り向いて言い放った。

「・・・・とりあえず、チェックってところかしら。」
「じゃあね・・・・。ありがと。」

パタリと扉が閉まり、アクアの気配が完全に消えてからも、シリウスは暫く呆けていた。

「・・・・本当に、怖い子だね。君は。」

深い溜息と共に零れたのは、苦笑にも似た表情。
一体何処まで知っているだろうかと畏怖する程の発言を時々アクアは口にする。 それは、都合が悪い筈なのに・・・。

真実に、たどり着いて欲しいと願ってしまうのは、何故だろうね?



勝負に、決着が着くのは、まだ先。




END.......




シリウスが普通の人になっちゃって後悔。(爆)
我が理想のシリアクぽじしょん。(笑)
腹の探り合い。(爆)賢い人好きです。
でもワタクシは馬鹿だから書きにくい。(爆)