魔王と姫君



ちゅっどーーーーーーーんっ!!!!!!


此処はとある小さな町。可もなく不可もなく、でも平和でまったりとした
それなりに幸せな町である。
その小さな町の一角の小さな通りにて。
とある朝、突然爆発が起った。

こんな小さな町なのだから、誰もが驚き飛び上がりそうな出来事。
だが、住民・・・基、爆発した通りに住んでるおばさんは、眠たそうな顔で窓を空け。

「レーティスなんて・・・・大っ嫌いですわーーーーー!!!!!」
「私、もう我慢なりませんわっ、実家に帰らせて頂きますっ!!

そんな可愛らしいけれど憤慨した声を聞いたものだから、
小さく溜息を吐くと、何事もなかった様にまた窓を閉めた。

      「またやってるわよ。隣のレーティスさんとディアーナちゃん。」
      「毎日お熱いわよねぇ・・・・。」

まぁ良いか。っとそして住民たちはそそくさと再び眠りに着いた。

さて、場所を遠く離れたクライン王国王宮の庭園にて。
今や王妃殿下となったメイと正式なクライン王となったセイリオス。
そして王宮筆頭魔道師であるシオンとその妻であるシルフィスは午後の紅茶を楽しんでいた。
それは、忙しい職務に終われる彼らにとって、唯一の安らぎの時間である。


・・・・・・筈だった。

「メイ、お兄様、シルフィス〜〜〜〜!!!!!」

が、其処へシュンっとか言う魔法音と共に突然乱入してきたディアーナ。
しかも瞳に涙を一杯溜めている。そんな彼女はわっと泣き出すと、シルフィスの胸の中へ一目散に飛び込んだ。腕を広げて待っていたセイリオスは何処か寂しげである。

「おーい、姫さん、俺を無視するなよ。」

シオンのそこはかとない自己主張も、あっさりと黙殺された様だ。

「姫!?どうかなされたんですかっ!?」

取りあえず子供の様に泣くディアーナを可愛いと思いながらぎゅっと抱き締めるシルフィス。

「レーティスが・・・レーティスが・・・。」
「何っ!?一体何をされたのだ、ディアーナ!!」
「き・・・・・ききき・・・・・・」
「「「き?」」」

「キスをしますのーーーーーーーー!!!!!」


「「「・・・・・はぁ?」」」


それはそれは見事な沈黙と脱力感が一同の顔に広がった。筆頭魔道師であるシオンのみが、 一人可笑しそうに肩を震わせている。


「そ・・・そりゃ・・・ディアーナさ・・・け、結婚してるんだから、不思議じゃあないんじゃ・・・・?」

恐る恐る言葉を選んでメイは訊ねた。ディアーナの瞳に更にじわりと涙が滲ぶ。

「いいえっ!だって、だって、街中ですのよっ!?本当に所構わず何処でもっ!!!」
「人が・・・人が見てますのに・・・私、恥かしくてもう町を歩けませんわぁぁぁぁーー!!!」

そして又もやわっとシルフィスの・・・あくまでもシルフィスの胸の中で泣き崩れた。
純粋なディアーナらしい理由だが、一同が微妙な表情を張り付かせる中、一人だけ憤慨したのはやはりこの人。


「な・・・ななななんと言う不埒な奴だっ!!けしからんっ!!ディアーナ、もう二度と戻らなくても良いぞ!そんな奴の所にはっ!!ずっと此処に・・・ぐはっ!!」
「ごめん、セイル。でもややこしくなるからちょいと黙っててねんv」

興奮したセイリオスに笑顔でアッパーを食らわせた挙句テーブルに沈めるメイ。殿下、どうやらすっかり尻に敷かれている様である。

「でもさ、ディアーナ、もしかして家出して来たの?喧嘩なら良くしてたけど、それは不味いんじゃない?」
「う・・・・解ってますわ・・・でも、でもっ!お兄様は節操があるからメイはそんな事が言えるんですわぁ〜〜!!」

そしてぐっとシルフィスの瞳を見あげ、ディアーナは言った。

「シルフィスは・・・シルフィスは解ってくれますわよねっ!?シオンですもの。きっと聞くもおぞましいようなふしだらな事を色々されているのでしょうっ!!??」

そう言うディアーナの瞳は何処となく憎しみに燃えている。ちょっと怖いかもしれないと思いながらも、シルフィスの顔は図星だと言う様に紅く紅潮した。

「ひゅーひゅー、やるねぇ。シオン。」

それを更に仰ぐメイ。殿下、今だ撃沈中。

「まぁなぁ、でも、何処でもやるっつー事はそれだけ好きなんだろ?姫さんの事。」

シオン、今日始めてまともな発言である。

「う・・・・。」
「それに、男には理性っつーもんがあってだな。時には我慢できなくなる事もあるんだ。それをちったぁー解ってやれよ。姫さん。」

シオン、隣で聞いているシルフィスの顔が茹蛸状態になっている事に気付いていない。
いや・・・気付いていてやっているのか。

「本当は何処でもやりたくて仕方ねー生き物なんだよ。男ってーのは。」


ズカッバキッドコッ

三人娘から同時にアッパー&キック&ローリングソバットをくらい、空まで飛ばされるシオンだった。


「姫、シオン様の言う事はともかく・・・レーティス様が姫を大切に思っているのは、本当だと思いますよ。」
「そうだよ、ディアーナ。あたし、魔法やってたから解るんだよね。ディアーナから感じるもん。すんごい魔力の結界ビンビンにさ。」

ディアーナは沈黙した。確かに、今日朝怒り任せで思わず発動させた魔法は、思ったより・・・と言うよりも信じられないくらい威力が大きかった。きっと、レーティスが自分を守る為に張った魔力の結界の所為だったのだ。

レーティス・・・大丈夫でしたかしら・・・。

ディアーナはきゅっと手を胸の前で握り締めた。

「んでも、レーティスの事だから、迎えに来るでしょ。その内。せっかく戻って来たんだからさ。三人で遊ぼうよ。」
「そうですね、久しぶりに姫ともお話がしたいですし。」

表情を曇らせたディアーナを励まそうと、メイとシルフィスは明るく言い放った。

「はいっ!!」

そして途端に嬉しそうに顔を綻ばせたディアーナと共に、三人娘は、旦那をその場に置き去りにして、久々の友水入らず(?)を楽しむのであった。

所が、事態は思ったより好ましくなかったのである。
ディアーナがクラインに戻ってから3日が経った。何時もなら一日足らずで向かえに来る彼女を没愛している魔王が、今だ姿を表さないのだ。
日に日に表情を曇らせて行くディアーナに、メイもシルフィスもセイリオスも、
不安を募らせていた。

帰ればいいのに・・・と思う所なのだが、何分、来る為の魔方陣はあっても、帰る為の魔方陣は無いのである。レーティスが迎えに来ない限りは。

「シオン様・・・魔方陣を作る事はできませんか?姫が余りにかわいそうです。これでは。」
「自分で家出して来たくせに?」

しれっと言い放った夫に、シルフィスは眉を顰めた。

「そんな言い方は酷いですっ!」
「まぁまぁ、怒んなって、心配しなくてもそんな必要ねーよ。」

そう言って含みのある笑いをすると、シオンはまた書物に視線を落としたのであった。


ディアーナは、出かける気にもならず、部屋の中に閉じこもっていた。

レーティス、わたくしの事を嫌いのなったんですの・・・?
だから迎えに来ないのですわ・・・きっと・・・。

わたくしが、わがままを言ってしまった所為で・・・。


すっかり反省して落ち込んでしまっているディアーナは、もう既に当初何に
怒っていたのかすら思い出せない様だ。

「ひくっ・・・・レーティス・・・会いたいですの・・・」

終に堪えきれずに、涙がぽろぽろとディアーナの瞳から溢れ出した。

「何故泣いている。」
「だって・・・レーティスが、わたくしの事・・・嫌いに・・・ひっく。」
「俺はお前を愛しているぞ。」
「そんなこと、レーティスにいわれなければ・・・・・って・・・れ、れれれれレーティスっ!!!???」

其処に居たのは、今の今まで名を呼んでいた人物ではないか。一体何処から何時の間に現れたんだと驚きの余り、ディアーナは素っ頓狂な声を上げて飛びのいた。外からメイドの慌てた声が聞こえたので、 慌ててなんでもないと言い放ってから、ディアーナは深呼吸を繰り返して目の前の人物を改めて凝視した。

「れ、レーティス・・・・?本物ですの?」
「何故偽者なのだ。」
「だ・・・だって、いつから此処にいましたの?」
「三日前からだ。」

・・・・・は?

ディアーナの目は点になった。
それに、何故か罰の悪そうな表情を浮べる魔王、レーティス。

「お前が・・・嫌いと言うから、現れてはならんのだと思っていた。」

そう言ったレーティスの顔は、何だか叱られた子供の様で。
あぁ、そうだ。この人はそう言う人なのだと、ディアーナは思った。
何をするにも、子供と同じ知識しかない。動物並の本能で動いている様な人なのだ。でも、放っておけない、しょうがない人。
ディアーナの胸は、愛しさで一杯になった。

「ごめんなさいですの、嫌いなんて、嘘に決まってますわ。」

そしてぎゅっと彼に抱きつく。

「大〜好きですわ。レーティス。」
「・・・・・ディアーナ」

可愛らしく抱きついてきた妻の柔らかい体を腕の中に閉じ込めて。
魔王、レーティスは頭の中で考えた。

取りあえず、人前でキスすると怒られた。
此処に人は居ない。
だがあの朝もいなかったぞ。

・・・・・・・・

でも何より可愛いディアーナは猫の様に腕の中で幸せそうな表情を浮べている。

まぁ、良いか。

「え・・・きゃっ・・・んんんっ!!!」

都合良くベットも後ろにあるしっと言う訳で、レーティスはディアーナを押し倒してその唇を奪った。
突然の事にもがくディアーナだが、その抵抗が更なる煽りとなり、歯止めが利かなくなる。

まるで獲物を貪る様に深く、その果実のような唇を堪能してから、レーティスはディアーナを解放した。


「っ・・・・はぁ・・・はぁ・・・」

肩で息をしながら、ディアーナはレーティスの瞳を見あげた。黄金の瞳が、有無を言わさぬ力を持っていて、
ぞくりと背筋に戦慄が走る。こんな時、ディアーナは決まって身動き一つ取れなくなるのだ。
彼が、魔王と言われる一つの由縁だろう。

「・・・・・怒っているか?」

散々人を弄んだ後に聞く台詞でもない気がするが、その台詞と本人とのギャップが可笑しくて、ディアーナは緊張していた事も忘れ、思わずくすりと笑みを漏らした。

「いいえ、怒ってませんわ・・・・。でも、人前でこんな事はしないでくださいましね。・・・恥かしいですわ。」
「・・・・この間は人前ではなかったぞ。」

人は居なかった。っとあくまでも強調する魔王レーティス。

「そ、それは・・・でもっ、人が通るかもしれないではありませんのっ!公衆の場は駄目ですわっ!」
「・・・・そうか・・・解った。」

少し不満そうにしながらも、ディアーナの言う事には一切逆らわないレーティスなのである。
その姿は忠犬並だ。

「・・・帰ってもいいのか?」
「はい、帰りましょうレーティス。」

そう言って彼の手に腕を回したディアーナを愛しそうに抱き締めてから。
人騒がせな二人はクライン王宮から消え去ったのだった。

「正真正銘のバカップルだね。ありゃ。」

それを扉の前で立ち聞きしていた人物が三人居た事も知らずに。

「もがもが・・・ぷはっ!メイっ!!何をするのだっ!!」
「あ、殿下。自力脱出?凄い凄いっ!サーカス団に入れるよ。」

仮にも夫を縄で縛り上げた挙句、口まで封じているメイ。恐るべし。

「で、殿下すみません・・・でも、乱入されるとやはり話しがこじれるので・・・・」
「いやー、しかし、熱いねぇ?こりゃ負けてらんねーよな?よし、行くぞシルフィス!」
「ええっ!!ちょ、ちょっと待って下さいシオン様ーーーー!!」

シュンっと言う音を立てて、これまた転移魔法で消えるカップル。

「うわっ、早っ!置いてかれちゃったよ。うーん、あたしたちだけ、ラブが足りないと思わない?殿下。」
「・・・そういう台詞は縄を解いてから言ってくれないか。」
「え?あ、でもこのままでもいいかも・・・・?」
「うわぁぁぁっ!!な、何をするんだっ!!??」


以下転々とクラインのバカップル物語は続くのだった。

 

 


〜Fin〜



-comment-

初めて書いたんですけど、実は好きなんです。レティディア。
いかがでしょうか?バカップルぷりが出てれば幸いです。(笑)
レーティスは、魔王と書いて忠犬と読む。(爆)