変わり行くもの
それは、世界が蒲色に染まる夕刻の事。
銀色の髪を靡かせながら歩いていた少年は、不意に見慣れない光景を目の辺りにし、
足を止めた。
「あの、すみません、何をしているんですか?」
畑の横で、鉄製の樽らしきものを幾つも出している子供と、
畑物にビニールの袋を被せているその父親らしき人物。少年は怪訝そうに尋ねた。
「え・・?あぁ、明日雨が降りそうだから、その下準備をしてるんだよ。」
「下準備ですか・・・?」
「ああ、あの樽は雨水を溜めておく為のものだろ。で、もし降りすぎたりすると、
野菜が駄目になっちまうから、俺はこうしてビニールを被せてる訳さ。まぁ、どれくらい
降るのかは明日になってみないと解らんけど。慎重に越したこたないだろ。」
額の汗を拭いながら、農夫は答えた。そして、少年が聞き返す暇を与えず、樽相手に遊びだした子供に説教を初めてしまう。
「・・・・・・」
「プルート?何しているの?」
不意に鈴を転がす様な声で、彼の名が紡がれ、少年は驚いて振り返った。
「アクアさん・・・っと、ブルーさん。」
貴方方の方こそ・・・っと其処に立っていた、何処か似た雰囲気を持つ少女と青年に訊ね返す。
「これから帰るところよ。」
相変わらず無口な青年に代わって、少女は答えた。
「何か・・・おもしろいことあった?」
そうして好奇心旺盛な瞳を輝かせる少女は可愛らしい。その横に佇む青年が、
僅かばかりに眉を潜めた事を見とって、プルートは苦笑した。
「いえ・・・そう言う訳ではないのですが。少し、話しをしてました。」
「あの人たちと・・・?ふふふ・・・プルートが元星読みだと知ったら、きっと腰をぬかすわね。」
「あ、アクアさんっ!しぃーー!!!」
楽しそうに言う少女の口を慌てて塞いでから、少年は大きく溜息を吐いた。
「ふふふ・・・プルートがあわててる。」
限りなく楽しそうな笑みを浮べる少女に頭痛を覚える。
「まぁ、それはそうと・・・せっかくだから、いっしょにかえろ。」
が、そんな彼の心情は完全に無視して、飄々とした少女はさらりと言ってのけた。
反射的に、隣の青年を見てしまうプルート。だが、その彼がそれほど不機嫌そうでもなかったので、
プルートは大人しく頷いた。
◆
「・・・・・思ってしまったんです。私が、やってきた事は、なんだったのかって。」
「・・・・・。」
三人で歩きながら、不意にそう言ったプルートに、少女は驚く様子もなく、黙って耳を傾けていた。
青年の方は、やはりと言うか何と言うか、引き続き無表情を徹しており、傍から見れば無表情
三人組と言う事で、そこはかとなく怖い物があるかもしれない。
「私と言う星読みが在った時・・・未来を知る事は、何より緊要でした。でも、それが無くなった今でも、
民は変わる事無く生きています。」
それから、躊躇う様に息を吐いて、少年は言った。
「私のやって居た事は・・・本当に、無意味な事だったんですね。」
「無意味なことなんて・・・・ないわ。プルート・・・。」
黙っていた少女が、凛とした声で答える。
「そんなこと・・・、いったらだめよ。あなたのしてきたことが・・・無駄なら・・・この島が、いまここにある事も・・・ひていしなくては、
いけなくなるわ・・・。」
互いの顔を見るでもなく、歩みを緩める事もなく、続けられる少女の言葉。
「ひとは・・・いつでも幸せに向かっているのだもの。まちがいだって、あったかもしれないわ・・・
でも、無駄じゃ・・・ないわ。あなたが、がんばってきた、れきしは・・・・全部・・・いま、この島を形つくっているじゃない。」
ふわりと、潮の香を乗せて、風が吹いた。
少年の顔が、夕日に照らされて、良く見えなくなる。
「・・・・ありがとうございます。アクアさん。」
だから、どんな表情で、プルートがそれを言ったのか、アクアにも、ブルーにも解らなかった。
それで、良いのかもしれない。
「それでは、私は此処で・・・アクアさんブルーさん、また、明日。あっ、会議には、ちゃんと時間通り来て下さいね、アクアさん。」
分かれ道までたどり着いた所で、礼儀正しく一礼すると、プルートは、踵を返した。
去り際に、丁寧に釘を刺されたアクアは、うっと唸りながらも手を振って別れを告げる。
そして、自分の横に佇む、結局、終始黙寡黙だった青年に、顔を向けた。
「あいさつは・・・きちんとしなきゃ駄目よ。ブルー。」
どこか拗ねたような少女に窘められて、青年は初めて表情を崩した。
「ごめん・・・やっぱり、苦手なんだ。」
「いいよ・・・・つぎは、ちゃんと、手だけでも、ふってね?」
素直に謝られてしまっては、怒るに怒れず、少女は溜息を吐くと、それだけ言った。そして、ゆっくりと歩き出す。
「君は・・・人に、甘い。」
「・・・・そうかしら・・・?」
青年からそんな台詞が飛び出るのは、珍しい事ではなく、少女は大して気にする様子もない。
だけど、むっとした青年に、くすりと笑うと、彼の前に回り込んで、その頬を両手で捕えた。
「やいてるの・・・?ブルー。」
「・・・・・・・わからない・・・。」
少し、苦しそうに青年の表情が歪む。人になったばかりの彼は、様々な感情を持て余している様だった。
「へいきよ・・・ずっと、いっしょだから。」
彼の不安を拭い去るろうと、少女は微笑んだ。それは、神秘的なまでに、美しく優しさに
満ちていて。青年は衝動的に少女を引き寄せると、強く胸に抱いた。
「・・・・っ・・・どうしたの?」
苦しいと言ってしまえば、彼が、悲しむと解っているから。少女は、代わりに尋ねた。
「わからないよ・・・・・アクア・・・わからない。」
子供の様に、そう繰り返す声は、寂しげで。仕方ないわね、っと少女は小さく溜息を吐くと、
青年の背中に手を回し、安心させる様になでてやった。
アロランディアの、日が沈む直前の事。
コメント:
取りあえず、ブルーとプルートはマリン支援じゃなかったのか!!自分っ!!(笑)
いや、マリンちゃん支援なんですよ。この二人共。でもやっぱりアクア萌えと言いますか。
そして創作の元は萌えという現実が・・・(爆)しかし、人前でも平然といちゃつきそうですよね。
ブルアクは。(爆)