アイドル





紫紺の騎士、アーク・ハリントン。多少性格面で問題は見られるものの、剣の腕前は超一流。 様々な分野で天才と謳われ、おまけに見た目も良い。
言い寄る女性は数知れず、泣かせた女も数知れず。

そんな彼は最近、人生最大級の苦悩に直面していた。


それもこれも皆・・・・。

ざわざわざわ・・・・。


外が騒がしい。


「おいっ!来たぞっ!!」
「ほ、本当かっ!?お、俺、服装大丈夫かな・・。」
「あ、待ってくれっ!俺も行くっ!!」


そして続けざまにドタバタとしだした、某大使曰く、男だらけでムサイ騎士院。 その某大使曰くムサイ騎士たちは、誰もが落着かない様子で、 とある者は慌ててシャワーを浴びに行ったり、とある者ここぞとばかりに剣の腕を披露しようと新米騎士捕まえて、稽古を始めたり、 とある者は新しくかった靴磨き某を握り締め、かちこちに固まった状態で立ち尽くし、又とある者は日々大切に育てていた花を躊躇いなく根こそぎ採取したり・・・。

っと、個々のステータスに合わせて涙ぐましい努力を始め出した。

・・・・ちっ、来やがったな。あいつ。

そんな周囲の浮かれた空気に反して、思い切り眉を顰めるアーク。 既に疲労困憊といった面持ちである。

「ふふふ・・・皆解ってないな。今日は僕が勝たせてもらうよ!!」

そう言って怪しげにほくそえんだ騎士の手には、何時の間に作ったのか、香立つオムライスが。

ぶちっ
バキッドゴッ!!

「ざっけんなっ!!!」

取り合えずその変態(決め付けてる)を無言で地に沈め、アークは疲れた体を支える様にして壁に手を着いた。実を言うと 最強兵器(オムライス)の登場にびびったのは秘密である。

「これ、騒がしくするでない!!・・・まったく、近頃の若いモンはなっとらんの。」

そう言ったのは騎士院の古株であるご老人。ジジイもたまには良い事言うじゃねーかと 思い振り返ったアークだが、その頭皮の良く見える髪にこってりと塗られたオイルを目の当りにし、 思いっきり壁に頭をぶつけたくなった。

アホだ・・・こいつら全員アホだ・・・。

「アーク?どうしたの・・・?つわり?」
「んな訳あるかっ!あほぅ・・・ってぇ!!何時の間にっ!?」

「ないすな、ノリ突っ込み。49点って所ね。」
「不合格じゃねーかよっ!・・・じゃなくって人の質問に答えろっ!!」

話しが進まないと解っていながらも、突っ込まずにはいられないらしい。
周囲の騒動を余所に、突然現れたこの騒動の根源であるアクアは、集中する視線にまるで気付かない様子で、飄々と立っていた。その手に抱えきれない程の包みの数々に、 アークの眉が一層顰められる。どう考えても、アクアが持参した物でない事は明らかだ。

貰ってんなよ。
どうせ食いモン以外は捨てるくせに。

「ったく一体何しに来たんだよ、今日は。」
「むっ・・・・・アークには・・・関係ない。」

突き放す様に言うと、アクアは、頬を膨らませてプイっとそっぽを向いた。そしてすたすたと、 タイムリーに近くに立っていた老騎士の元へと歩み寄る。

「・・・・神殿からの。通達です。」
「おおっ・・・これはこれは。態々貴方が届けに来て下さるとは。ご苦労様でした。」

・・・・鼻の下伸ばしてんじゃねーよジジィ。

思わず拳を握り締めてしまうアーク。さり気無くアクアの頭を撫でたりしている辺りが非常にむかつく。 大体、何時も魔道師の事を批判している癖に、何故アクアにだけは態度が違うのだ。

「・・・・終った。帰る。」

そう言ってすっとアークの横を通り抜けたアクアは、やはり何処か怒っている様だ。

やべー、さっきの気にしてんのか?

確かに少し冷たかったかもしれないが、それは何時もの事だ。大体、アクアがそんな事を気にするような柔な神経の持ち主ではない事は 明らかだ。

「ああアクアさんっ!!帰るのでしたら僕が送っていきますとも!!」
「おいっ!抜け駆けするなよっ!俺がお送りいたしますっ!!」
「いや、俺がっ!!!」

途端に我先にと詰め掛ける騎士たち。が、何時もはしなやかに断る筈のアクアが、 今日に限っては違った。

「そうね・・・荷物、おおいし・・・・お願いしようかしら?」

「待てコラ。」

何堂々とパシリさせようとしてんだ。

思わず突っ込みを入れたアークだったが、アクアの可憐な仕草にすっかり心を奪われてしまった 騎士たちの耳には全く届かない。それ所か、既に誰がどの荷物を持つか・・・などと相談を始めている。

ちっ・・・。

アークは思わず舌打ちした。

「来いっ!!このバカっ!!」
「きゃっ・・・!?」

ぼろぼろと、彼女の抱えていたプレゼントが落ちる音がするが気にしない。ってかむしろ好都合だと ばかりに、アークはアクアを肩に担ぎ上げた侭、全力疾走で騎士院から抜け出した。




「アークのバカ。持つのは、荷物であって、わたしじゃ、ないわよ?」
「バカはてめーだろっ!!何が荷物持ちだ、このガキっ!」
「む・・・か弱いおとめの荷物を持つのは、男としてとうぜんのぎむよ。」
「何処にいるんですかね〜?そのか弱い乙女とやらはっ!!」

バキャッ!!

「ってぇ・・・・言ってる側から暴力振るってんじゃねーよっ!」

広場の一角、別名公衆の面前にて、アークとアクアは堂々と喧嘩を続けていた。 昔なら此処でリュートが仲介に入るのだが、何分今は止める人物も居ない為、二人の喧嘩が丸一週間と長引く事もしばしばだった。

「っ・・・とにかくっ!お前はもう騎士院には来んなっ!!」
「・・・・どうして?」
「一々あんな騒動起こされちゃ叶わねーんだよっ!」
「そんなの・・・魔法院も、神殿も、同じようなものよ?」

ぶっ!!!

思わず吹き出してしまうアーク。そう言えば神殿も男だらけだった。魔法院も最近は男子生徒が増えた等とヨハンが言っていた気がする。
なんっつー女だ。

四面楚歌とも言える状況に、アークは心底頭を抱えた。

「兎に角、騎士院は止めろ。良いなっ!」

取り合えず、そう言うと、アクアの表情が一瞬寂しげに曇った。

「お、おい・・・?」

突然の事に驚くアーク。がしかし、顔を上げたアクアは、ぐっと眉を顰めて言い放った。

「・・・・バカ。」
「はぁぁっ?」

なんでそうなるんだ。訳が解らないと、奇声を上げるアーク。

「・・・・・・・会えないじゃない。」
「・・・・は?」

さっきから開いた口が塞がっていない。

「・・・・・騎士院にいかないと・・・アークに、あえない。」



・・・・・・・・・。



軽く一分ぐらいは固まっただろうか。



チョットマテ。

混乱の余り思考がカタカナだ。

今、なんっつーた?コイツ。



恐る恐る視線を向けると、アクアは怒った様にアークを見あげていた。羞恥からか、怒りからか、 その頬は紅を差したように赤くなっており、瞳は僅かに潤んでいる。
アクアの攻撃。アークに1万ポイントのダメージを与えた。残りHP100。ピンチである。



やられた・・・・・。

畜生、可愛すぎる。


ってか元から顔は可愛いけど、言動まで可愛い事言いやがって。


「・・・・あのさ、別に騎士院に行かなくても、会える様になる方法ならあるぜ?」
「・・・・?」
「俺と住めば良いじゃん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

笑顔で言い放ったアークに、アクアの長い沈黙が送られる。取り合えずアークは攻撃に備え身を構えた。

「・・・・なんで?」

ずるっ、っとアークは脱力した。せめて照れるか怒るかなんでも良いから反応をしてくれれば こっちも返答のしようがあると言う物だが、アクアは全く解っていない様子で怪訝そうに首をかしげている。

「アークは、そうしたい?」
「え?あー・・・・まぁな。」
「・・・・じゃあ、先生に聞いてみる。」

待てっ!!良いから待てとアークは踵を返したアクアを引き止めた。まるで友人の家に お泊りに行くようなノリで話すアクアに一抹の不安を覚える。

解ってねー、こいつは絶対解ってねー。

いや、でもそれはそれで良いか・・・・?

解ってたら断られるかもしれないし。っと発想が邪な方向へと傾いている様だ。

「アクア、俺たち、恋人だよな?」

確認する様にアークは訊ねた。

「・・・・・たぶん?」

なんで疑問系なんだよ。っとちょっと不満に思いつつも、話しがこじれるので突っ込まないでおく。

「先生に言う時は、その事をちゃんと強調しておけよ?」
「・・・?わかったわ。」

少し怪訝に思いつつも素直に頷いたアクアに、アークは内心ほくそえんだ。ちょっと・・・っと言うか可也ヨハンの怒りが怖い気がするが。

「もし、許可下りねー様だったら、俺に言えよ。」
「へいき。・・・・がんばるね。」

そう言うと、アクアは嬉しそうにぽっと頬を染めた。珍しく素直な反応に、アークは又もや大ダメージを受けた。

だーーー!もう駄目だ、可愛すぎるこいつ。

「きゃ・・・んっーーーー!!」

終に耐え切れず、アークはアクアの腰を引き寄せると深く噛み付く様にその唇を奪った。公衆の面前で。 普段暴力的なアクアも、キスをすると途端に大人しくなる。そこら辺やっぱ女なんだよなーっと、彼女が聞いたらパンチ確実な 台詞を内心で思うアークだった。



その後、ユニシスの魔法やら、ヨハンの呪いやら、数々の受難を潜り抜けて、なんとか同棲生活を開始する事に成功したアークではあったが、 その見返りとしてヨハンと交わした「16歳になるまでは手を出しません。」契約に生き地獄を味わう事になったとかならなかったとか・・・。







コメント:

いやぁ・・・青春だねぇ。キミたち。っつーかあんたら誰や。(爆)アクア15、アーク19の設定です。いや、萌えだねっ!(え) でもなんてか・・・これ、アクアちゃんスキーじゃないと、読んでて腹の底からムカツイてくる 話しかも。あはは。(笑うな)