| :閑話1: |
|---|
|
あつーーーーーーいっ!!!!!!! いえ、覚悟はしていましたけれどこれほどとはっ!熱いですっ!真にっ!! 「メッジモークの人は、海蛇を食べたりるんでしょうか。」 王宮の中庭に作られた巨大な噴水に、精霊体(ようするに蛇の姿)で浸かっていた私は、急に声をかけられ驚いて首をもたげた。背後に何故か機嫌の悪そうなリトの姿が。あれれ・・・?先ほどまで練習場にいた筈ですが・・・。 「た、たべないんですか?不老不死とかになれても・・・?」 あぅ・・・またもや明らかに馬鹿にしている視線です。最近、リトにこういう目つきで見られる事が多い気がします・・・やはり、わたくしのこの世界に関する知識が足りない所為なのでしょう。修業あるのみですね。 「・・・・・漫才に付き合ってる暇は無いから手短に用件を言わせてもらうぞ。」 ふぅっ・・・と溜息を吐いて、リトの態度が豹変する。まさかアスターナ様と同じタイプだったなんて・・・これが、同属嫌悪ってものなのですね。 「外に出たいと国王陛下に言ったそうだな?どういうつもりだ?」 ぎくっ・・・リトは、さすが隊長さんだけあって、情報も早いのです。メッジモークに留まれる事になった代わりにと、わたくしは、リトと三つ約束をしたのです。 理由は解らないのですが、この姿が好まれないというなら、仕方ありません・・・。 「でも・・・ずっと、隠れていたら、わたくし、お役に立てませんですよ・・・。」 うえ、そ、そうですよね。話の流れだと自然にそうなりますよね。う、うーん。 「家事・・・とか・・・。」 うわーんっ、もう視線が凍結しちゃってます〜!家事だって立派な技能です!! 「そういう事はメイド長にでも言え。」 そ、その通りですね。はい。 「ふぅ・・・大人しくしてろ。それが契約だったろう?」 リトの言葉に、わたくしは何も言う事はできません。でも・・・やっぱり、お役に立てなくては、此処にいる意味がないのです・・・。わたくしは、お役にたちたいのです・・・。 「あの・・・この姿は、そんなに不味いのでしょうか・・・?」 に、二の句も継げない返答です。 人間側・・・ずいぶんと、含みのある言い方です。 「キーリトスー!?どこにいるの??」 ですが、訊ねる前に、王女様がやってきたので、リトは踵を返して、わたくしも、慌てて噴水の中に潜り込んだのでした。リトとの、三つ目の約束は・・・必要以上に、リト近づかない事。 さみしいですが、仕方ありません。 「うーーーー・・・つまらないですー・・・・。」 メッジモークで、わたくしは一人ぼっちです。リト以外はお話してくれる方がおりません。 あっタイムリーに向こうから女官さんがやってきました。 「こんにちは、良いお天気ですね。」 平凡すぎる挨拶で申し訳な・・・ 「ひっ!きゃぁぁぁぁぁあああああっ!!」 い・・・と言おうとしたらもうダッシュで駆けて行かれました。今回はまた一段と過激な反応でしたね・・・そこまで酷い外見だとは思ってなかったのですが・・・・・。
ふぅ・・・・。 ああ、洗濯物が散乱しております。申し訳ない事をしましたね。洗ってお返ししましょう。 「これ、どう考えても・・・・女神の使者様がやったのよね・・・?」 陛下との謁見を終えて廊下を歩いていた俺は、女神の使者と言う言葉に、思わず立ち止まった。あの馬鹿・・・また何かしたんじゃないだろうな。本人悪気は無いのだろうがが、常識そのものが外れているのだから、もっとたちが悪い。 「しっ!仮にも女神の使者様なのよっ!?天罰とか下ったらどうするのっ!」 実際女神の姿を目の中りにしたのは、最上層に君臨する一部の者だけだ。下々の者は、こうして噂からどんどん話を飛躍させて行く。このまま行くと、マリーンの立場は益々悪くなって行くだろう。・・・・彼女が、何かで神の力を証明しない限りは・・・・。それにしても、使用人に係るなとあれほど忠告しておいたのに、 「今度は一体なにやらかしたんだ・・・・・。」 返答を期待していなかった俺は、突如割り込まれた声に不覚にも狼狽してしまった。振り返ってみれば、マリーンが手に洗濯物らしき衣類を持って、ちょこんと立っている。 「あ、リトが慌てた所初めてみました。驚きました?」 くすくす可笑しそうに笑う彼女は・・・先ほどの会話は聞こえて無かったのか・・・。 「んー・・・でも、残りの洗濯物を持ってきたのですが・・・今入るのは不味そうですね?」 こいつ・・・・聞いて・・・・? 「嫌われちゃってますね〜。やっぱり。」 あははっと、マリーンは笑った。その笑顔は繕っている様にはとても見えなく、余計に俺を困惑させる。ラメアは、支給人の噂に一々神経を立てる。別に咎めるべき事ではない、他人を気にするのは人間の性と言うものだ。精霊だから、関係無いのかもしれないが。 「・・・だから、係るなと言ったんだ。」 何を言ったら言いのか解らない。けど、気がつけば、口を出ていたのはそんな台詞だった。 「んーー、でも、直接係った訳じゃないですよ。」 やはり笑った。 突如、這い上がる不快感。 「忠告を受けないつもりなら、それでも良いが。自分の姿が化け物だと言う事を少しは自覚しておいて欲しいな。蛇の姿だけじゃない。人間のふりをしていてもだ。追い出されたくなければ大人しくしてろ。」 何を・・・何故口走ってしまったのか、俺にも解らなかった。こんな事は、今まで一度もなかったと言うのに。だが、弁明をしようと口を開きかけて、止める。怒るなら、怒れば良い。神の使者であった頃とは、明らかに違う態度を罵れば良いと思った。 「・・・・・・・。」 マリーンは押し黙ったまま無言で、俺を見上げる。 「んーっと・・・・・・・・。」 何を思ったのか、今度は小さく唸って考え込んでいるようである。 「解りました。じゃあ、リト、これ、返しておいて下さいね。」 突如顔を上げたマリーンは、洗濯籠を俺に押し付けて笑顔でそう言い放った。自分が一体どんな顔をしているのか、想像したくもない。騎士に洗濯物を渡しやがるか、このガキ。 「でも、シーツがないと、明日、宮廷内全ての『恋人がいる熱々(死語)カップル』に恨まれちゃいますよ?」 渾身の力で俺は突っ込みを入れた。 「人の話聞いてたのかオマエはっ!!!」 にこにこと害の無さそうな・・・・いや、最も有害な笑みを浮べるヘボ自称精霊の頭を思いっきりどついてやりたい気分に駆られながらも、俺はなんとか震える拳を抑えて叫んだ。 「え、聞いてましたけど・・・・?」 それこそ、俺の怒りの理由がまるで解らないと言う様に、首をかしげるマリーン。 「あ・・・・・。」 刹那、マリーンが小さく声を上げ、ちらりと俺を見た。 「・・・・しゅ、しゅらばのピーンチ・・・?」 一人言つもりなんだろうが、立派に聞こえてる。マリーンの余計な一言に一瞥をくれてやると、彼女は慌てて揖(い)っして、静かに俺の傍を通り過ぎた。 「貴方が、あんな感情的になるのは初めて見たわ。キーリトス。」 何を言うのかと思えば。 「そうでしたでしょうか。」 女は面倒だ。言いたい事があるならはっきり言えないのか。回りくどい言い方に、苛立ちながらも、俺は軽く交わそうと曖昧な返事を返した。 「そうよ。・・・・でも、あんな事を言って神の怒りが恐くないのね。貴方は。」 常識的に考えて、人の話は立ち聞きするものではないだろう。だが、それをラメアに諭すのも面倒だ。聞かれて不味い事も言ってない。 「いいえ。」 神の怒りなど、恐くは無い。それに、マリーンはもう女神の使者ではないのだ。 「・・・・・・・・・。」 何の力もない。 心許無く尋ねたマリーンの顔が、脳裏に突如思い浮かんだ。 馬鹿な奴だ。神界という楽園に住んでおきながら。こんな世界に、留まるなんて。 「キーリトス?」 ラメアの返答を待たずに俺は踵を返す。これは後で絶対問い詰められそうだが、仕方ない。
「マリーンっ!!出て来いっ!!」 だが、暫く待っても返事はない。 人間の姿でいるのか・・・・? だが、服の感触が好きではないらしく、マリーンは殆どいつも精霊体で過している。 一体何処に・・・・・・。 そこまで考えて俺は硬直した。 まさか、城を出たのか・・・!? 嫌な考えが過る。民に神の使者の存在を知らせていない。知れば、誰もが一目会いたいと願い出る事は目に見えているからだ。だが、彼女の姿を見れば、誰もが真っ先にスコーピオンと畏怖するだろう。そして、人は恐怖の対象を排除しようとするものだ。 「ちっ!!」 俺は舌打ちした。マリーンが出て行ったのなら、それは、俺の所為なんだろう。 けど、あの馬鹿。人に見つかったら何されるか解ってるのか。 精霊体は脅しだけでもかなりの威力がありそうだが、街に被害を及ぼしたら、俺は、騎士隊長として、あいつを倒さなければならなくなる。 どうすれば良い・・・・? 苛立っても仕方が無い。問題を起す前に連れ戻さなくては。 その途端。 「あれ、リト〜?」 ふやけた声が頭上から聞こえた。 「ここですよ〜。上です。上。」 上・・・・って木の上か・・・・? 「よいしょっと、見えますか〜?」 身を乗り出してマリーンはひらひらと手を振った。 「・・・・・・・さっさと降りて来い。」 メッジモークでは、植物が育ち難い。緑樹に至っては、王都でも数本しか見られない貴重な物だ。天然記念物にも認定されている。登るなんてもっての他だ。 「ちょっと待って下さいね。」 そう言うな否や、ドレスがふわりと浮び上がった。 「うえっ!?わ、わ、、どいて下さいーーーーーーーっ!!」
叫び声と共に、マリーンが腕の中に落ちてくる。 「び、びっくりしました。」 ポカッ 「痛いです〜!」 これくらいで許してやったんだから有難いと思えこの野郎。 「う〜〜・・・・でも、危ないのはリトですよー。私、変身しようと思ってたんですから。そしたら、リト、下敷きになる所だったんですよ?そうなったらスプラッタですよ!?」 頭をさすりながら、マリーンが涙目で恐ろしい事を口走る。そういえば咄嗟でコイツが人間じゃない事を忘れていた。確かに、あの巨体の下敷きになったら、ひとたまりも無いだろうな。 「それはそれは、差し出た事をしてしまい申し訳ありませんでした。」 皮肉っぽく言ってやると、マリーンが慌てて頭を振った。 「え、ああっ!!ご、ごめんなさいっ。いえ、あの、そんな事ありませんよ。嬉しかったです。はい。ありがとうございました、リト。」 にこりと、マリーンが笑みを溢して。 「なんで木になんか登ってたんだ。蛇のくせに。」 どうもコイツの前だと、一言余計な事を言ってしまう。 「だって、木の上からだと、城下町が見えるんですよ。それに、蛇ですから、木登りはお手の物ですよ。」 種類によるだろ種類に。お前は海蛇だったんじゃないのか。 「そういえば、リトは、私に何か用があるのでは?」 マリーンの方から尋ねられて、俺は一瞬言葉を詰まらせた。それはそうだろう。油を売れる程俺は暇じゃない。 「・・・・・・・・・これをやる。」 無愛想に押し付けられた小箱に、マリーンが瞳を丸くする。 「これ・・・・なんですか?なんか、一杯入ってるみたいですけど。」 マリーンがオウム返しに尋ねる。 「バラバラになったピースを組み合わせて、この写真を完成させるんだ。」 無造作に説明すると、マリーンが無言のまま瞳を一層大きく見開いた。 「取りあえず、さっきは・・・・・・言い過ぎたから。」 悪かった。 「・・・・・・・ぷっ。ふふふふっあはははははっ。」 暫くの沈黙の後、突如マリーンが噴出したものだから、俺は驚いて彼女の顔を見た。 「あははっ・・・リトは、やっぱりアスターナ様と似てますね。」 アスターナ様・・・。それは、水の女神アスターナの事だろう。一体何処が似ているのか想像もつかず俺は眉を潜めた。それがまたツボだったらしく、マリーンが腹を抱えて笑い崩れる。そんなに可笑しいのか。人の顔みて失礼な奴だ。 「アスターナ様も、機嫌が悪いと、すぐに私をいじめるんですよ。でも、暫く経つと必ず後悔なされて、おみやげをもって謝りに来るんです。」 いじめてない。と言いかけて俺は口を噤んだ。 ふぅ・・・・。 「解った。悪かった。」 仕方なしに、溜息を吐いて俺は謝罪した。 「ふふふっ・・・それだけじゃあないですよ。」 どこか子悪魔っぽくマリーンが笑みを深めた。 「アスターナ様が持って来たおみあげって、必ず自分が好きなものだったんですよ。」 「リトは、パズルが好きなんですね。」 一瞬の沈黙の後。 威勢良く笑いやがってこのガキ。
侮れない。 |
| 苦し紛れな閑話。(遠い目) 楽園にエントリーしております。この小説を読んでまぁ、許せる出来だわvと思った方は投票してやってください。 開いたページの投票ボタンをクリックすれば投票されます。 <<...TOP...>><<...BACK...>><<...NEXT...>> <<...HOME..>> |