:閑話1:

あつーーーーーーいっ!!!!!!!

いえ、覚悟はしていましたけれどこれほどとはっ!熱いですっ!真にっ!!
せめてわたくしがタコであったなら、おいしく茹で上がってくれたかもしれませんが・・・。

「メッジモークの人は、海蛇を食べたりるんでしょうか。」
「食べる訳ないだろ。」
「うわひゃぁぁぁっ!!???」

王宮の中庭に作られた巨大な噴水に、精霊体(ようするに蛇の姿)で浸かっていた私は、急に声をかけられ驚いて首をもたげた。背後に何故か機嫌の悪そうなリトの姿が。あれれ・・・?先ほどまで練習場にいた筈ですが・・・。

「た、たべないんですか?不老不死とかになれても・・・?」
「成れるんですか?」
「い・・・いえ・・・試した事はないのですが・・・人魚はなれますから、人蛇も良い線行くのではないかと。あははっ・・・・。」
「・・・・・。」

あぅ・・・またもや明らかに馬鹿にしている視線です。最近、リトにこういう目つきで見られる事が多い気がします・・・やはり、わたくしのこの世界に関する知識が足りない所為なのでしょう。修業あるのみですね。

「・・・・・漫才に付き合ってる暇は無いから手短に用件を言わせてもらうぞ。」

ふぅっ・・・と溜息を吐いて、リトの態度が豹変する。まさかアスターナ様と同じタイプだったなんて・・・これが、同属嫌悪ってものなのですね。

「外に出たいと国王陛下に言ったそうだな?どういうつもりだ?」

ぎくっ・・・リトは、さすが隊長さんだけあって、情報も早いのです。メッジモークに留まれる事になった代わりにと、わたくしは、リトと三つ約束をしたのです。
一つは、他の者には、女神の使者で通す事。もう一つは、して人前に姿を見せない事。

理由は解らないのですが、この姿が好まれないというなら、仕方ありません・・・。
でも、人の姿でもいけないのでしょうか・・・。外見は、人間そのものだと思うのですが・・・不思議です。

「でも・・・ずっと、隠れていたら、わたくし、お役に立てませんですよ・・・。」
「それじゃあ聞くが、具体的にお前はどんな力があるんだ?それが解らなきゃどうしようもない。」
「えっ!!??」

私が瞠目すると、リトは訝し気に眉を顰めました。

「そんなに驚く事か。」

うえ、そ、そうですよね。話の流れだと自然にそうなりますよね。う、うーん。

「家事・・・とか・・・。」
「・・・・・・・・。」

うわーんっ、もう視線が凍結しちゃってます〜!家事だって立派な技能です!!

「そういう事はメイド長にでも言え。」

そ、その通りですね。はい。

「ふぅ・・・大人しくしてろ。それが契約だったろう?」

リトの言葉に、わたくしは何も言う事はできません。でも・・・やっぱり、お役に立てなくては、此処にいる意味がないのです・・・。わたくしは、お役にたちたいのです・・・。

「あの・・・この姿は、そんなに不味いのでしょうか・・・?」
「拙いな。」

に、二の句も継げない返答です。

「う・・・で、でもっ、人に・・・見えると思うのですが・・・。」
「この世界だと・・・少なくとも人間側にいる限りは露出しない方が身の為だ。」

人間側・・・ずいぶんと、含みのある言い方です。

「キーリトスー!?どこにいるの??」

ですが、訊ねる前に、王女様がやってきたので、リトは踵を返して、わたくしも、慌てて噴水の中に潜り込んだのでした。リトとの、三つ目の約束は・・・必要以上に、リト近づかない事。
王女様と結婚するので、色々と問題がある様なのです。わたくしには、よく解りませんが、人の世界は複雑なのです。

さみしいですが、仕方ありません。

「うーーーー・・・つまらないですー・・・・。」

メッジモークで、わたくしは一人ぼっちです。リト以外はお話してくれる方がおりません。
女神の使者だと言う事から、遠慮なされているのか、大蛇の姿に恐がられているのか、それとも別なのかは解りませんが、話かけても、皆様逃げて行かれるのです。
実戦をしてみましょう。

あっタイムリーに向こうから女官さんがやってきました。

「こんにちは、良いお天気ですね。」

平凡すぎる挨拶で申し訳な・・・

「ひっ!きゃぁぁぁぁぁあああああっ!!」

い・・・と言おうとしたらもうダッシュで駆けて行かれました。今回はまた一段と過激な反応でしたね・・・そこまで酷い外見だとは思ってなかったのですが・・・・・。


・・・・・・・って、精霊体解くの忘れてました。


ま、まぁ、大蛇の姿なら、無理もありませんが・・・人の姿でも、同じようなものなのです。他の世界では、結構人気あるのですが、何故でしょう。人の姿には結構自身があっただけにショックです。

ふぅ・・・・。

ああ、洗濯物が散乱しております。申し訳ない事をしましたね。洗ってお返ししましょう。







「これ、どう考えても・・・・女神の使者様がやったのよね・・・?」
「それしか考えられないけど・・・どうしよう〜っ!やだぁ、気持ち悪い〜っ!!」

陛下との謁見を終えて廊下を歩いていた俺は、女神の使者と言う言葉に、思わず立ち止まった。あの馬鹿・・・また何かしたんじゃないだろうな。本人悪気は無いのだろうがが、常識そのものが外れているのだから、もっとたちが悪い。

「しっ!仮にも女神の使者様なのよっ!?天罰とか下ったらどうするのっ!」
「でも、あの姿はどうみても魔物だものっ!女神様は大層お美しい方であったと聞いたわよっ。」

実際女神の姿を目の中りにしたのは、最上層に君臨する一部の者だけだ。下々の者は、こうして噂からどんどん話を飛躍させて行く。このまま行くと、マリーンの立場は益々悪くなって行くだろう。・・・・彼女が、何かで神の力を証明しない限りは・・・・。それにしても、使用人に係るなとあれほど忠告しておいたのに、

「今度は一体なにやらかしたんだ・・・・・。」
「なんにもしてないですよ。」
「うわっ。」

返答を期待していなかった俺は、突如割り込まれた声に不覚にも狼狽してしまった。振り返ってみれば、マリーンが手に洗濯物らしき衣類を持って、ちょこんと立っている。

「あ、リトが慌てた所初めてみました。驚きました?」

くすくす可笑しそうに笑う彼女は・・・先ほどの会話は聞こえて無かったのか・・・。
俺はほっと胸を撫で下ろした。

「んー・・・でも、残りの洗濯物を持ってきたのですが・・・今入るのは不味そうですね?」

こいつ・・・・聞いて・・・・?

「嫌われちゃってますね〜。やっぱり。」

あははっと、マリーンは笑った。その笑顔は繕っている様にはとても見えなく、余計に俺を困惑させる。ラメアは、支給人の噂に一々神経を立てる。別に咎めるべき事ではない、他人を気にするのは人間の性と言うものだ。精霊だから、関係無いのかもしれないが。

「・・・だから、係るなと言ったんだ。」

何を言ったら言いのか解らない。けど、気がつけば、口を出ていたのはそんな台詞だった。
マリーンが俺を見上げる。酷だと責められるだろうか・・・あまり、想像できなかった。
マリーンは何時も笑っている。正直不気味だ。人は、怒り、悲しみ、憎む事で人となる。それが無いから、こいつは神の使いなのだろうな。

「んーー、でも、直接係った訳じゃないですよ。」

やはり笑った。

突如、這い上がる不快感。
何故か酷く癪に障って、俺は気がつけば詰るように冷酷な言葉をかけていた。

「忠告を受けないつもりなら、それでも良いが。自分の姿が化け物だと言う事を少しは自覚しておいて欲しいな。蛇の姿だけじゃない。人間のふりをしていてもだ。追い出されたくなければ大人しくしてろ。」

何を・・・何故口走ってしまったのか、俺にも解らなかった。こんな事は、今まで一度もなかったと言うのに。だが、弁明をしようと口を開きかけて、止める。怒るなら、怒れば良い。神の使者であった頃とは、明らかに違う態度を罵れば良いと思った。

「・・・・・・・。」

マリーンは押し黙ったまま無言で、俺を見上げる。
その瞳には悲しみも怒りも無く。只、心を覗き込むまれるような視線に居心地が悪い。

「んーっと・・・・・・・・。」

何を思ったのか、今度は小さく唸って考え込んでいるようである。
予測不可能な反応に、俺は居心地悪くそこに立っているしかなかった。
だから係りたくなかったんだ。普通じゃない。いったいなんなんだ、こいつ。

「解りました。じゃあ、リト、これ、返しておいて下さいね。」
「は?」

突如顔を上げたマリーンは、洗濯籠を俺に押し付けて笑顔でそう言い放った。自分が一体どんな顔をしているのか、想像したくもない。騎士に洗濯物を渡しやがるか、このガキ。
ってゆーか言葉通じてねーだろ、この野郎

「でも、シーツがないと、明日、宮廷内全ての『恋人がいる熱々(死語)カップル』に恨まれちゃいますよ?」
「マテ。」

渾身の力で俺は突っ込みを入れた。
子供の顔してとんでもない科白をごく普通に言いやがったな。今。
だいたい意味解ってるのかコイツ。いや、解ってるんだろうな。俺より長生きしてる訳だし。いや、その前に話が噛み合ってないだろう。

「人の話聞いてたのかオマエはっ!!!」

にこにこと害の無さそうな・・・・いや、最も有害な笑みを浮べるヘボ自称精霊の頭を思いっきりどついてやりたい気分に駆られながらも、俺はなんとか震える拳を抑えて叫んだ。

「え、聞いてましたけど・・・・?」

それこそ、俺の怒りの理由がまるで解らないと言う様に、首をかしげるマリーン。
・・・・・・ここは一発殴ってこのポンコツを修復するしか・・・・・。

「あ・・・・・。」

刹那、マリーンが小さく声を上げ、ちらりと俺を見た。
一体なんだ・・・・?
振り返った俺の目に映ったのは、揺れる段丘状の髪。
何時も通り二人の女官を連れたラメアが、静かにそこに立っていた。

「・・・・しゅ、しゅらばのピーンチ・・・?」

一人言つもりなんだろうが、立派に聞こえてる。マリーンの余計な一言に一瞥をくれてやると、彼女は慌てて揖(い)っして、静かに俺の傍を通り過ぎた。
それと同時にラメアの足音が近づく。その髪の色が、水面を思わせる澄みきった水色である事から、ラメアは生まれてこの方髪を伸ばし続けている。彼女の身長よりも幾分長い髪は、打掛へと流れ、それを引き上げる為に、ラメアの背後には常に女官が二人続いていた。

「貴方が、あんな感情的になるのは初めて見たわ。キーリトス。」

何を言うのかと思えば。

「そうでしたでしょうか。」

女は面倒だ。言いたい事があるならはっきり言えないのか。回りくどい言い方に、苛立ちながらも、俺は軽く交わそうと曖昧な返事を返した。

「そうよ。・・・・でも、あんな事を言って神の怒りが恐くないのね。貴方は。」
「聞いていたのですか。」
「聞いては、いけなかったかしら?」

常識的に考えて、人の話は立ち聞きするものではないだろう。だが、それをラメアに諭すのも面倒だ。聞かれて不味い事も言ってない。

「いいえ。」

神の怒りなど、恐くは無い。それに、マリーンはもう女神の使者ではないのだ。
天罰など下せない。非力な只の・・・・・。

「・・・・・・・・・。」
「どうしたの?キーリトス。」

何の力もない。

「私・・・・・ここを、追い出されてしまうんでしょうか。」

心許無く尋ねたマリーンの顔が、脳裏に突如思い浮かんだ。
あれから、マリーンは殊勝だった。ずっと。一言も、優しい言葉を掛けたことなど無かったのに、ずっと笑っていた。俺以外に、話せる人間すらいないこの世界で。

馬鹿な奴だ。神界という楽園に住んでおきながら。こんな世界に、留まるなんて。

「キーリトス?」
「いえ・・・ラメア様。すみません、御用があるのでしたらば後ほどに。一旦失礼させて下さい、では。」

ラメアの返答を待たずに俺は踵を返す。これは後で絶対問い詰められそうだが、仕方ない。
自分でも情けないが・・・この感情は罪悪感なんだろう。一歩歩く程にじわじわと心臓に食い込んで来る。タチが悪い。酷な事を言ったという自覚は最初からあったと言うのに。


気がついたら、俺は、中庭にやってきていた。
仕方ないだろう。仕事が手につかなかったんだ。
苛立だしげに噴水に近づき、声を荒げる。

「マリーンっ!!出て来いっ!!」

だが、暫く待っても返事はない。
中庭の噴水はオアシス程水嵩がない。蛇の巨体で潜られれば、嫌でも影が見える。その所為で近頃は中庭が通れないと苦情が来るぐらいなのだ。だが、噴水の水は、眩しい程に澄み渡っていた。

人間の姿でいるのか・・・・?

だが、服の感触が好きではないらしく、マリーンは殆どいつも精霊体で過している。
不気味だから止めてくれと頼んでも、耳を貸した試しはない。

一体何処に・・・・・・。

そこまで考えて俺は硬直した。
何処にも、行ける場所など、無い筈だ。
静か過ぎる中庭を通り過ぎた風が、水面に波紋を作った。

まさか、城を出たのか・・・!?

嫌な考えが過る。民に神の使者の存在を知らせていない。知れば、誰もが一目会いたいと願い出る事は目に見えているからだ。だが、彼女の姿を見れば、誰もが真っ先にスコーピオンと畏怖するだろう。そして、人は恐怖の対象を排除しようとするものだ。

「ちっ!!」

俺は舌打ちした。マリーンが出て行ったのなら、それは、俺の所為なんだろう。
顔に出さなくても、傷つけたのかもしれない。

けど、あの馬鹿。人に見つかったら何されるか解ってるのか。

精霊体は脅しだけでもかなりの威力がありそうだが、街に被害を及ぼしたら、俺は、騎士隊長として、あいつを倒さなければならなくなる。

どうすれば良い・・・・?

苛立っても仕方が無い。問題を起す前に連れ戻さなくては。
俺は踵を返して走り出した。

その途端。

「あれ、リト〜?」

ふやけた声が頭上から聞こえた。

「ここですよ〜。上です。上。」

上・・・・って木の上か・・・・?
俺は噴水横に植えられた大木を見上げた。
緑陰の合間に、黒いドレスが見え隠れしている。

「よいしょっと、見えますか〜?」

身を乗り出してマリーンはひらひらと手を振った。

「・・・・・・・さっさと降りて来い。」

メッジモークでは、植物が育ち難い。緑樹に至っては、王都でも数本しか見られない貴重な物だ。天然記念物にも認定されている。登るなんてもっての他だ。

「ちょっと待って下さいね。」

そう言うな否や、ドレスがふわりと浮び上がった。
っ!?

「うえっ!?わ、わ、、どいて下さいーーーーーーーっ!!」


トスン

叫び声と共に、マリーンが腕の中に落ちてくる。
初めての時も思ったが、人ではありえない程の軽さだ。

「び、びっくりしました。」

ポカッ

「痛いです〜!」
「びっくりしたのはこっちだっ!飛び降りる奴がいるか!?」

これくらいで許してやったんだから有難いと思えこの野郎。

「う〜〜・・・・でも、危ないのはリトですよー。私、変身しようと思ってたんですから。そしたら、リト、下敷きになる所だったんですよ?そうなったらスプラッタですよ!?」

頭をさすりながら、マリーンが涙目で恐ろしい事を口走る。そういえば咄嗟でコイツが人間じゃない事を忘れていた。確かに、あの巨体の下敷きになったら、ひとたまりも無いだろうな。

「それはそれは、差し出た事をしてしまい申し訳ありませんでした。」

皮肉っぽく言ってやると、マリーンが慌てて頭を振った。

「え、ああっ!!ご、ごめんなさいっ。いえ、あの、そんな事ありませんよ。嬉しかったです。はい。ありがとうございました、リト。」

にこりと、マリーンが笑みを溢して。
その笑顔で、俺はここまでやって来た理由を思い出した。
だが、当の本人は全く気にしていなさそうなこの状況で、なんて言えば良いんだ。

「なんで木になんか登ってたんだ。蛇のくせに。」

どうもコイツの前だと、一言余計な事を言ってしまう。
慌てて口を塞ぐが、マリーンは気にした様子もなく大木を見上げた。

「だって、木の上からだと、城下町が見えるんですよ。それに、蛇ですから、木登りはお手の物ですよ。」

種類によるだろ種類に。お前は海蛇だったんじゃないのか。
そんな事を聞いた所で「細かい突っ込みはしちゃ駄目です。」とか言われるんだろう。俺は内心で溜息吐いた。これ以上非常識が一つ二つ増えた所で大差無い。

「そういえば、リトは、私に何か用があるのでは?」

マリーンの方から尋ねられて、俺は一瞬言葉を詰まらせた。それはそうだろう。油を売れる程俺は暇じゃない。

「・・・・・・・・・これをやる。」

無愛想に押し付けられた小箱に、マリーンが瞳を丸くする。
それからシャカシャカと箱を振った後、訝しげに首を傾げた。

「これ・・・・なんですか?なんか、一杯入ってるみたいですけど。」
「パズルだ。」
「・・・・・・パズル?」

マリーンがオウム返しに尋ねる。

「バラバラになったピースを組み合わせて、この写真を完成させるんだ。」
「いえ、それは知ってますけど、なぜこれを私に・・・・・?」
「暇なんだろう?・・・・外には、出せないから。それでも遊んでろ。」

無造作に説明すると、マリーンが無言のまま瞳を一層大きく見開いた。
そんなに驚く事を言っただろうか。

「取りあえず、さっきは・・・・・・言い過ぎたから。」

悪かった。
そう言おうとしたのだが、言葉が出てこなかった。謝罪する事ぐらい社交辞令で幾らでもしてきた筈なのに、なぜか妙に恥かしいのだ。何やってるんだか、俺は。

「・・・・・・・ぷっ。ふふふふっあはははははっ。」

暫くの沈黙の後、突如マリーンが噴出したものだから、俺は驚いて彼女の顔を見た。
何が可笑しいのだろう。

「あははっ・・・リトは、やっぱりアスターナ様と似てますね。」

アスターナ様・・・。それは、水の女神アスターナの事だろう。一体何処が似ているのか想像もつかず俺は眉を潜めた。それがまたツボだったらしく、マリーンが腹を抱えて笑い崩れる。そんなに可笑しいのか。人の顔みて失礼な奴だ。
ひとしきり笑うと、涙を拭って、マリーンは言った。

「アスターナ様も、機嫌が悪いと、すぐに私をいじめるんですよ。でも、暫く経つと必ず後悔なされて、おみやげをもって謝りに来るんです。」
「・・・・・・・・。」

いじめてない。と言いかけて俺は口を噤んだ。
確かに、今のマリーンは弱者だ。その彼女にあんな台詞を浴びるのは、いじめになるのかもしれない。しかも、例え中身は俺の何十倍生きていたとしても、外見はまだ幼いのだから、容姿がコレでなければ、傍から避難されるのは間違いなく俺だったろう。

ふぅ・・・・。

「解った。悪かった。」

仕方なしに、溜息を吐いて俺は謝罪した。
あの傲慢な女神と似ていると言われるのは心外な事他ならない。

「ふふふっ・・・それだけじゃあないですよ。」

どこか子悪魔っぽくマリーンが笑みを深めた。
俺は眉を顰める。

「アスターナ様が持って来たおみあげって、必ず自分が好きなものだったんですよ。」

「リトは、パズルが好きなんですね。」

一瞬の沈黙の後。
嫌でも赤くなっている事が解る自分の顔を隠して、完全にやられたと思った。

威勢良く笑いやがってこのガキ。

 

侮れない。


苦し紛れな閑話。(遠い目)
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