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リトが手の平を掲げた途端、凄まじい勢いで冷気が集結していくのが解りました。 ドゴォオオオオオオッ!! 「きゃああっ!」 な、なななっ…!? 「ああ、すまん。コントロール間違えた。水が多いせいか…?」 独り言のように、今度は指先から小さな氷片を出現させるリト。 「り、リト…、その力は…?」 この世界の人間は、魔法なんて使えない筈ですが…。 「お前の影響じゃないのか?」 反対に尋ねられ、困惑する私。 「ち、違うと、思います…その、私は闇の精霊ですから。」 確かに水の女神アスターナ様の下で働いていましたし、海蛇ですから、水の属性を持たなくもないのですが…。人間に力を分け与えるなんて高度な能力があるとは思えません。 「まぁ、良い。とりあえず、灯りはなんとかなったから行こう。」 あっけらかんとそう言って、リトはすたすたと歩き出してしまいました。
−−−−−−−−−かないで。
え…?
−−−−−−−−−−−帰ってきて。
何…?
呼ばれたような気がして振り返っても、そこには静かな泉があるだけで。
「何してるんだ、行くぞ。」 そうですか…。私の空耳でしょうか。 「妙な事言っていないで、さっさと行くぞ。」 痺れを切らして歩き出すリトに、自然に手を繋げられて、どきりと胸が高鳴りました。 「あ、あの…。」 て、手を…。 「さっさと言え。」 きっとリトは私が迷子にならないようにと単純な気持ちで手を繋いだのでしょう。
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「あの、リト…さっきから随分歩いていますが、ひょっとして迷ってたり…?」 洞窟の中は薄暗く、氷の淡い光だけが頼り。
樹海よりも迷宮のような地下空洞で、どうやって迷わずにいられるというのでしょう。 「俺は迷わない体質なんだ。」 いや、できませんよ、普通。単純な道ならともかく、こんな迷路のような場所を、数時間も歩いていれば脳内マップなんてとっくに白紙に戻ってます。 「たぶんこっちが出口だ。風の流動があるからな。…疲れたのか?」 り、リリリリトに気遣われましたっ!? 「り、リリリトっ!?」
「お前の体重なんて、ほとんど無いようなものだろ。こうしてた方が速い。」 そう言いながら、リトはすたすたと歩き始めてしまいます。 「お前、さっきから挙動不審だぞ。」 誰のせいですか誰のー!! 「スコーピオンに、何かされたか?」 片手で顎を捕らえられ、正面から蒼い瞳とかち合う。 「な、何もされてないです。」 あわあわと答えると、ほっとしたように手が離れました。 「でも、朧さんが亡くなってしまいました。」 訝しげにリトが眉を顰める。 「リト、本当に人とスコーピオンは争わなくてはいけないのですか?」 涙ながらに尋ねると、暫くの沈黙の後、盛大に溜息を疲れました。 「おまえ、さっそく絆されたな。」 絆されたんじゃありませんっ!この目で見て、この耳で聞いてきたんですから! 「スコーピオンが人と争う道を選ぶ以上、戦いは免れない。それに、俺たちが仮に止めると言っても、民の私恨は晴れないだろう。肉親を殺された奴に、実は悪くないから、仲良くなれなんて言うつもりか、お前は。」 リトの言葉は、至極最もで反論もできずに私は黙り込むしかありませんでした。 「スコーピオンの中に、人間を殺す事を躊躇う奴はいない。そして、人間の中にスコーピオンが淘汰される事を憂うものはいない。」 解ってますそんなこと。 二種族の亀裂は、この嘆きの谷よりも深いのかもしれません。
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寂しげな顔で俯いたマリーンに俺は小さく溜息をついた。 慰めるつもりでポムポムと頭を撫でてやると、マリーンが複雑そうな眼差しで俺を見上げた。顔を赤らめて、零れ落ちそうな赤い瞳をばしばしと瞬かせる。 一瞬頭が真っ白になった。 ん…光…? 突然瞼を刺した光に、俺は眼を眇めた。 「あ、ここっ!朧さんや一縷さんに連れられて通った場所と似ています。」 そんな事だれがするか。震えるマリーンを呆れた眼差しで見つめる。 認識してしまえば、新しい力を扱うのは難しくなかった。 砂の滝を見据えて、門をイメージする。
「す、すごい…。」 出来上がったそれを見て、マリーンは感嘆の声をあげた。 「出るぞ。」 マリーンを抱きかかえたまま、氷の扉を潜ると、白い砂漠のど真ん中に出た。
「あ、ここなら、座標を定める事ができます!!」 マリーンが興奮したように顔を赤らめて言った。 「お前、今度は過去とかに飛ぶなよ。」 ぎょっと瞳を見開いたまま口をぱくぱくさせるマリーンに、態と意地の悪い笑みを浮かべる。 「悪いな。せっかく俺の記憶だけすっぱり消してくれたのに。」 ざーーーっとマリーンの表情が、面白いぐらいに勢いよく青ざめる。 今度こそ、何があっても、マリーンを利用させはしない。
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