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「・・・・と、いう訳で、わたくし、力が限界まで消耗されると、一時的に仮眠状態に入るのです。その間、水が近くにあれば、自動的に吸収するのですが・・・無かった場合、そのまま干乾びてしまう所でした。はい。助かりましたですよ〜。有難うございます。」

にこにこと、神秘的な顔立ちに似合わぬ無邪気な笑顔を浮べて説明する女神の使者。

「・・・・そうですか。」

疲労困憊していた俺だが、あくまでも顔には出さず、業務的に頷いた。
早く解放してくれ。

「た、隊長さん、顔色が悪いですね。大丈夫ですか?」

お前の所為だ。

「いえ、平気ですので、ご心配なく。それよりも、その呼び方は止めて頂きたいのですが。」
「はい?」

きょとんと女神の使者は首を傾げた。部下でもないのに隊長と呼ばれるいわれはない。
まぁ、こんな部下を持つのは断じてごめんだが。

「女神の使者様にその様な恐れ多い名で呼ばれる訳には参りません。私の名前は、キーリトスです。」
「・・・・・・リト?」

おい、行き成り省略するか?

「解りました。じゃあ、お名前で呼ばせて頂きますね。うわぁ〜、緊張します〜。」

両手で顔を覆って、何故か感激しているようだ。絶対アホだろ、こいつ。

「あ、では、わたくしも、女神の使者とは、呼ばないで下さい。はい・・・その、もうクビにされてしまったので。」

・・・・は?

おい、このボケ女今なんて言った?
俺の耳が正しければ、首にされたと聞こえた気がする。たちの悪い冗談かと思ったが、今までのあばずれっぷりを見ていると、そうとも断言できない。

「失礼・・・今、なんと?」
「え・・・・?もうクビにされてしまったのですけど・・・?」
「・・・・・・・女神の使者に・・・・そのようなものがあるのですか?それとも、人間界の意味とは違う事をさしているのでしょうか?」
「??いやですね、首はクビですよ。女神様の使者は、精霊のおしごとなんですから、解雇されることだって、当然ありますよ。」

まぁ、このボケっぷりだったらクビにもしたくなるな。
などと納得している場合ではない。それじゃあ何か?このボケ旧女神の使者は、仕事をクビになったから、この世界に居座ろうとしているというのだろうか。

「あ・・・あの・・・ひょ、ひょっとしてわたくし、不味いことをいってしまったのでしょうか。」

どうやら、表情が知らぬ間に険しくなっていたらしい、旧女神の使者は少し怯えた様子で、俺の顔を覗き込んできた。まぁ、後で知らされるよりは、今知らされた方がマシだが。

さて・・・どうしたものか・・・・。

「え・・・えーっと・・・・・・。」

はっきり言って、女神の使者と言うレッテルは、彼女がこの世界に留まれる最後の命綱かもしれないのだ。彼女の容姿は、メッジモークの人と共に生活するには、支障になりすぎる。

「あ・・・・あの、でも、わたくし、力は残ってますから、お役には立てますよ。多分・・・だから、ここに、残ったのです・・・で、ですから・・・・。」

追い出さないで下さいと、消え入りそうな声で言って、女神の使者は、きゅっと唇を噛んだ。なるほど・・・これまでの不可解な言動が少し理解できたな。

「・・・・・・こんな世界に、なんで留まりたいなんて思うんだ?」

女神の使者という肩書きがなければ、どこからどうみても子供にしか見えない少女に、敬語を使うのも馬鹿らしくなってきた。

「えっ?そ、それは・・・・その・・・・もう説明した気がしますけど・・・・。」

いや、聞いてないぞ。本気で聞き返すと、女神の使者が頬が頬を赤らめたものだから、それで、俺はやっと思い出した。

「・・・・俺に惚れたんだっけ?」
「ぐはぁっ!そ、そんな率直に言わないで下さいっ!!いえ、本当ですけど。」

なんだか顔を手で覆ってパニック状態に陥っている。初っ端から公衆の面前で宣言しておきながら今更一体何を恥かしがってるんだか。・・・・面白いが。俺は小さく溜息を吐くと口を開いた。

「・・・・・俺は、王女の婚約者だ。お前の気持ちには答えられない。」

平然と述べた方が、傷つかないだろう。冷たい人間だと嫌われた方が助かる。

「・・・・・。」

パチパチと女神の使者が、言葉の意図を理解しようとするかの様にその大きな瞳を瞬かせた。

「・・・・?あ、解りました。それなら、全然心配いらないですよっ。」

その次の瞬間、俺の予想を大きく反して、ぽろりと笑顔がこぼれる。

「精霊は、恋に落ちると愛する者の傍でずっとその存在を見守るのです。姿自体が人目に見えない精霊も多くいますから。 そして、子孫を残す必要もありませんから、私たちは、恋する相手に何も見返りを求めたりしないんですよ。」
「・・・・・それはまた人間とは時限の違う愛情表現だな。」
「そうですね。」

まるで宗教の一説かと思わせるような台詞に風刺した返答をするが、全く通じなかったらしく、相変わらず笑顔で返された。
聞こえは良いかもしれないが、人の世界でこれは愛情として成り立たないだろう。愛情は受けた分だけしか返せないのが人間だ。溜息を吐くと、 女神の使者が怪訝そうに口を開く。

「でも、こんな世界なんて、言うの、素直じゃないですよ。リトはこの世界がすきでしょう?」

あまりにも突拍子もなく聞かれたものだから、思わず言葉を失った。
好き・・・なんだろうか、あまり、考えた事はない。どちらにしろ、人間に世界の選択権などないのだから。

「人間如きがそんな事言える身分ではございませんでしょう?」

態と皮肉っぽく言ってやると、女神の使者は困惑したように眉を潜めた。
伝わらなかったか?まぁ、いいけど。

「うーん・・・でも・・・・好きになって下さると嬉しいです。はい。嫌いでしたら、私、好きになって下さるように、頑張りますね。」
「まるで自分がこの世界を作ったみたいな言い草だな?」
「ぅえっ!?そ、そんな恐れ多いですっ、とんでもありませんっ!わ、私は、その・・・只、精霊として・・・・。」

少しからかっただけなのに、あたふたと顔を赤らめる女神の使者・・・・水の精霊。
実に信じがたいな。本当にどっからどうみても子供だ。からかい甲斐はあるが。

「冗談冗談。落ち着け。」
「はうっ・・・・隊長・・・じゃなくって、リト・・・・なんとなく・・・性格変わってませんか?いままで、猫被っていたんですね・・・。」
「礼儀を通していただけだ。」

俺の返答に納得したのか、しないのか、複雑そうに考え込む女神の使者・・・・って、
もう女神の使者じゃないんだっけ。

「名前・・・なんだっけ?」

只、安直に聞いただけなのに、

「マリーンですっ!」

そう言って、マリーンは、幸せを形にしたような笑みを浮べた。



第一章終了ですー。二章は全部執筆できてから公開開始しますので、暫くお待ち下さい。
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