:6−4:

 

プレイ・・・!?プレイって何の事でしょう。
よく解りませんが、リトが硬直してしまってます。

「り、リト・・・。」
「・・・もう好きにしろ。」

えっ、ええっ!?
なんですか、どうしてそんな氷点下の眼差しで見るんですか、ひーんっ!
踵を反して去ろうとするリトを引きとめようと、腕を掴んだ私ですが、その瞬間、リトが痛々しく顔を歪めたので、慌てて手を離しました。

「リト、どうかしたのですか?」
「いや、なんでもない・・・。」
「兄上、ひょっとしてスコーピオンに刺されたのでは?」

えっ!?

「いや、違う、蟲に刺されただけだ。っておいっ!」

止めるリトの言葉を聞かず、半ば強引に袖を捲り上げてみれば、上膊から肘にかけて、真っ青に変色してしまっています。

「!!!!」
「兄上、これは酷いですね、毒を早く取り除かないと・・・。」
「良い。民の手当てを先にしてくれ。」

うう、リトっ!その心意気はとても立派ですが、私は見ていられません!

「!!??」

カプッ
ちゅうちゅうちゅう。

 

「!?!?なっ・・・、マリーンっ!!」

 

ごくっ。

 

飲むなよっ!!

頭上から鋭い突っ込みと共に体を引き剥がされて、私はようやく我に帰りました。

 

「す、すみません・・・つい。」
「〜〜〜〜っ!!」

 

リト、顔が真っ赤ですよ。そこまで怒らなくても・・・。

 

「だ、だって、毒はこうして吸い出すんだって、教わって・・・。」
「突然やるなっ!!・・・しかも飲む奴がいるかっ!!」
「だ、大丈夫ですよ、私に毒は効きませんから!」

私のいいわけに、物言いたげに口を何度も開きかけたリトですが、結局深いため息と共に口を噤んでしまいました。・・・ま、また呆れられてしまったでしょうか。

「兄上、素直にお礼を言ったらどうですか?せっかく姉上が身を呈して助けてくださったのですから。」
気色悪い言い方するな。

ひぃっ!ブリザードがっ!リトの背後からブリザードがっ!誤解ですからそんな蔑んだ目で見ないで下さい〜!飛鳥ちゃんも、リトの怒りを煽るような事言わないで下さいー!!と私が狼狽している間に、リトは足早にさっさとその場から居なくなってしまいました。・・・うううっ。

「落ち込まないで下さい、姉上。兄上は照れているだけですよ。」
「そ、そうでしょうか。」

飛鳥ちゃんのポジティブシンキングが羨ましいです。

「所で姉上、気づいた事があるのですが・・・。」
「はい?」

 

 

 

 

 

 

あの脳裏花畑の天然ヘボ生蛇娘はっ!!!

一体どれだけ人の事を振り回せば気が済むんだ。
全く親の顔がみた・・・くないな。これ以上非常識な人外はごめん蒙る。こっちは非常識な人間だけで手一杯だ。

「リト兄、何一人で怖い顔してるんだ?」

唸る俺の背後からいぶかしげに声をかけてきたのはフェルシアだった。
飛鳥と同様に二年前遠征に出たフェルシアの任務は、スコーピオン討伐の為の、兵器開発
その成果が、登場と同時に、凄まじい破壊力を見せ付けてくれたこの黒い筒状の塊なのだろう。

「それが新しい兵器か?」
「おうっ!リト兄も見ただろ!?すっげぇー威力だよなっ!!なっ!?」

にかっと誇らしげな笑みを浮かべて、フェルシアは肩に担いでいた鉄の塊を、止める間も無く投げ寄越してきた。ブォウウウンッ!!とか何とか、重量感たっぷりな効果音と共に。ヤバイ。空気のうねりが凶器だと告げている。

ズシャアアアアッ!!

急いで飛びのいた瞬間、それまで俺が立っていた位置に落下した鉄塊が、土煙をあげて地面にのめり込んだ。

「なんだよ、リト兄、ちゃんと受け取らなきゃ駄目じゃんか。」
殺す気か!

飄々と言ってのけるフェルシアに頭痛がする。なんで俺の周りには非常識な奴らばっかりなんだ。

「これはお前専用の武器だな。」
「えええーーっ!?」
「お前以外に誰も持てないだろう。」
「持てるって!軽く作ってって長老に頼んだもんっ!」

じゃあなんだ、この地面のクレーターは自然の産物か。
それに、石の路面を抉るほどの重量なのだ。足場が不安定な砂地ではとても利用できない。

「少なくともお前が指一本で持って、軽く感じるぐらいの重さにしてもらって来い。」
「えー、そしたらアタシが持てないじゃんっ!!」
「お前はそれを使えば言い事だろうが!!」
「・・・あ、そっか。」

まったく、誰だこんな馬鹿に育てたの。

「まぁ、だが良く戻ってきたな。偉いぞ、フェルシア」
「えへへ〜〜〜vvv」

頭を撫でてやると、顔をほころばせて無邪気に笑う。発育の良さに忘れがちだが、フェルシアはまだ十五歳だ。その幼さで二年もの長い間遠征に出るのは、センチュリオンと言えど簡単な事じゃない。

「そういえば、兄様たちがさっき話してたなんか黒っぽい女の子。」
「マリーンの事か?」
「なんか、どっかで会った気がするんだよな〜。」
「・・・お前もか?」

どいつもこいつも。なんたってこう顔が広いんだ?あいつは。

「でも思い出せないんだよなー。飛鳥兄の親戚かな。」
「いや、それは無いだろう。」

そもそもマリーンは人間ではないのだが、あえて説明をするのも面倒で俺は適当に流した。

「うーん、じゃあ恋人かな。」
「・・・」

知るか。

あのヘボ精霊の行動は、俺の予想範囲をとうに超えている。いくら言い聞かせても大人しくしていない上に、面倒な人間にばかり好かれると言う実に嫌な特殊体質の持ち主だ。
その上「お前、今まさに殺されかけただろ。」という状況においてもヘラヘラ笑いやがる。
そんなんだから、誤解と厄介事を招く事になるんだ。

イライライラ

「リトーーーーーー!!」

まさに苛立ちも最高潮に達しようというこの時に、耳に届く能天気極まりない声。もはや狙っているとしか思えない。


「・・・。」

 

パタパタパタ。

 

「す、すごいんです!!すごいんですよ!リト!」

駆け寄ってきたマリーンは、興奮に頬を赤く染めている。いっそ腹が立つまでの浮かれようだ。
推測するに十中八九、飛鳥と何かあったのだろう。こいつは・・・誰の所為で俺が気苦労強いられてると思ってるんだ。よって、能天気な笑みを浮かべるマリーンの額を、苛立ち紛れに指で弾いたとしても、この場合俺に非はあるまい。

ビシッ!

「ひゃうっ、痛いです〜・・・。なんですか!突然!」

大げさすぎる動作でマリーンが額を押さえて、涙目に俺を見上げた。
お前・・・腹貫かれても泣かないくせに。その様子になんだか怒りも消えうせ、俺は調度良い所にある頭を撫でてやった。

 

 

 

 

もう、今日のリトは訳わかりませんっ!

 

「よしよし」

頭撫でられたぐらいじゃ誤魔化されませんからねっ!!そんな動物扱い!!
・・・まぁ、良いですけど。

「で、どうした?」
「あ!そうなのです!実は、先ほど、偉大な発明が成されたのです!!」
「・・・は?」

ああ、興奮で上手くできません。これを教えたら、リトはどれだけ喜んでくれるでしょうか。飛鳥ちゃんに態々お願いして、私の口から伝えると言ったのですから、しっかり話さなければ。

「あのですね!実はなんと、泉の毒を浄化できる方法が見つかったのです!!」
「・・・。」
「リト・・・?」


衝撃で言葉も出ないのでしょうか。突然表情が無くなったリトを私は戸惑いながら見上げました。あれ・・・なんでしょう。リトは、今・・・不安に思ってます?私、闇の精霊だから良く解ります。でも、どうしてこんな時に不安なんて・・・。

「あ、あの・・・。」
「お前、飛鳥と何した。」
「えっ・・・え・・・?」

こ、これは怒られる三秒前!?
反射的に数歩後退りした私ですが、逃がさないとばかりに腕を掴まれしまってはどうしようもありません。
う、うえーん。怖いですー!!

「えっと・・・だ、ダカンさんと同じように実験の手伝いをし」

ただけですよ。といい終わらぬ内に盛大な舌打ちが聞こえたかと思うと、風のごとくリトが走り出してしまって。

「り、リトーーー??」

い、一体何が起きたのでしょう。喜びのあまりいても立ってもいられず・・・と言う様子ではありませんでしたよね、むしろあの目は怒り爆発寸前だったような。
泉の浄化は、この世界で最も望まれている事である筈なのに。・・・私、ひょっとして何か説明し間違えたのでしょうか。だ、だとしたらいけません!追いかけなければ勘違いしたリトに、飛鳥ちゃんが怒られてしまいます、私の所為で!

一人納得し、慌てて私はリトの気配を追いかけて転移呪文を唱えたのでした

 

 


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