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皆様、たいへんお久しぶりです、マリーンです。
タイムトリップ事件から暫く時間が経ち、時々弓矢で狙われる他は、至って平穏な毎日を送っている私です。
え?リトとの進展ですか?・・・す、すすすすすみませんご期待に添えられるようなものは何も無く・・・。

それどころか、最近リトはますます忙しいようで、顔をあわせる機会すら無いのです。
今日も朝から国の偉い方たちと議事堂に引き篭りっきりで会議ですし、昨日遠征から帰ってきたばかりなのに、体が心配です。

 

「ですから、緊急事態だと申し上げているでしょう!!」
「どんな理由があるにしろ、会議中にお通しする事は禁じられております。」

 

ん・・・?あれは、確かリトの部下の・・・えーっと、確か・・・。

「オルドスさんっ!!」
「え・・・?ああ、女神の使者様。」

手を振ると、私の姿に気付いたオルドスさんは笑顔を浮かべて近づいてきました。
メッジモークで、私にも好意的に接してくださる数少ない方なのです。
どうやらイグニード将軍時代から補佐官をしているらしく、リトよりもずっと年上ですが少しも年若い上官を見下した所が無い立派な方なのです。

「どうかいたしましたか。お腹が空かれたのですか。」

なでなで。

毎回大変よくして下さっているのですが・・・この子供扱いにはどうも複雑な気持ちに・・・だって、私の方が年上ですよ?

「あの、いえそういう訳では無く・・・緊急事態だって聞こえたものですから・・・。」
「!!いいえ、女神の使者様を煩わせる事では・・・ただ今は一刻も早く隊長にお会いしなければ・・・。」

そういうオルドスさんの顔には隠しきれない焦りが滲みでています。
うーん、あ、そだ。

「私が忍び込んでリトに伝えてきます!」
「えっ!?」

蛇になれる事はリトに口止めされてますけど、困っている状態を放っておけません。
それに、不純な動機だとは解っておりますが、こんな口実でもなければ、リトに会えませんし。

「お任せ下さい!ちゃんと会議の邪魔にならないように忍び込めますから。」
「しかし・・・。」
「何か、メモに伝言を書いてもらえますか?」
「・・・解りました。」

半ば強引にメモを書いてもらい、それを持って私は人目のつかない所まで移動しました。
そして誰にも見つからないように蛇の姿に変身し、メモを口にくわえて壁をするするっと登っていきます。開いていた窓の隙間から体を忍び込ませると、そこは調度会議室の天上だったらしく、眼下に円卓を囲むようにして座っているリトと、この国の重役らの姿が見えました。


「だから、一刻も早く蟲退治をするべきだと私は前から言っていたのだ!!」
「しかし、現状、センチュリオンの他にスコーピオンに太刀打ちできる者はおりません。たった5人で、何万いるかも知れない大群と戦え仰るのですか。」
「イグニード将軍は、そんな絶望的な状況でさえ、勇敢に挑まれて行かれた。」
「・・・なるほど、私に殉職しろと仰りたい訳ですか。」

り、リリリト、笑顔の周りからブリザードが・・・!

「そ、そそうは言っておらん!だが、戦力を上げるのもお前の仕事の内だ!ともかくこのままでは民の暴動が何時起きるとも解らん!!」
「戦力を上げるより、今は水源システムの改善をすべきだと思います。野ざらし状態の水源では、あまりにもスコーピオンの奇襲を受けやすい。複数のオアシスから水を引き、中枢部にてそれを管理すれば、水の運搬がよくなり、都を大きくする事もできましょう。すでに設計図もできて・・・。」
「だが、その間スコーピオンどもはどうするのだ!!民の不安はもう限界だ。このままでは我々の地位も危うくなるのだぞ!」
「そうだ。人の姿に化けられるスコーピオンまで出現しだしたと言う。奴らを野放しすれば、何れ人の力が全く叶わなくなってしまうだろう。」

やはり、水姫祭が襲われた事が、大きな綻びを生んでいるようです。元々メッジモークは枯渇した貧しい世界。その上敵わぬ敵に怯える毎日を過ごさなくてはいけない人々にとって水姫祭は、心のよりどころだったのでしょう。
でも、それにしたって全部リトに押し付けるなんて酷いです!リトはこんなに頑張ってるのに!

「解りました。それでは、兵を強化しつつ、水源システムの建設も同時進行で行う・・・という事で宜しいでしょうか。」

リトの台詞に、返す言葉が無くなったらしく、大臣らは渋々頷きました。リト、そんな事言って大丈夫なんですか?今ですらプライベート時間全くない生活が、ますます仕事だけになってしまいますよ・・・というより、ちゃんと寝ているんでしょうか。心配です。

「それでは、今日はこれで解散と・・・。」

ええっ!?これで終りなんですか?
しまったメモをリトに渡さなくては・・・。
するするっと急いで壁をはいずり降りて、私はリトに近づいて行きました。
あ、リトはどうやら王様とお話しているようです。

「いつも苦労をかけるな、キーリトス。」
「いいえ。」
「こんな状況でわしが言えた立場でもないが、たまにはラメアにも顔を見せてやってくれ。お前に会えない日々が続いて、すっかり塞ぎこんでしまってのう。」
「解りました。時間ができ次第訪ねさせて頂きます。」

・・・。
はっ!ショックを受けている場合じゃありません。め、メモを渡さなければ。
王様と別れ、議事堂を後にしようとしているリトの背後から私は慌てて忍び寄り・・・。

「今度はスパイごっこか。」

一瞬のうちに首ねっこを捕まえられ持ち上げられてしまいました。
冷ややかな青い瞳の、刺すような視線。ひー!私、冷血動物なのに、全身から冷や汗が・・・。

「り、リリリト気付いていたんですか?」
「お前は色盲か?この議事堂の壁は白だ。」

うう、そりゃあ私は確かに黒蛇ですけどっ!!そ、そんな気にしてる事をざっくりと指摘しなくたって・・・シクシク。

「まぁ、幸い俺しか気付いていなかったらしいがな。・・・で?なんの用だ。」

うう、とっても久しぶりにあったのに、感慨の欠片もないんですね。解ってましたけど。

「えっと、オルドスさんが緊急の用事があるらしくって、手紙を頂いて参ったのです。」

口で加えていた手紙をどうぞ、と差し出すと、リトはため息ついてからそれを受け取りました。

「・・・ますます動物っぽくなってるなお前は。」

ガーーーンッ!!

「ど、動物じゃなくって一応精霊です!って投げないでくださーい!」

手紙を読む為に私が邪魔になったらしく、ぽーいっと投げられてしまった私は、慌てて人の姿に戻って抗議しました。・・・のですが、完全に無視されてしまいました。シクシクシク・・・。

「なるほどな。」


伝言は短いものだったらしく、一瞬で読み終えると、それをくしゃりと丸め、リトは私に視線を向けました。

「暫く遠征に出かける。・・・問題起こすなよ。」

ぽむぽむと私の頭を撫でて、そのまま踵を返すリト。

「リト、昨日帰ってきたばっかりなのに、また行くんですか?」
「仕方ない。遠方の集落が、またスコーピオンに襲われたらしい。」
「!!わ、私も・・・。」
「駄目だ、大人しくしていろ。」

ひ、酷いです。そこまで有無を言わさず遮断しなくても・・・。思わず口を噤んでしまった一瞬の合間に、リトは踵を返してその場から去ろうとしてます。

「り、リトっ!!」

ぐいっ!!

「なんだ?」
「え、えっと・・・。」

別に、用件があった訳ではないのです。ただ、あんまり会えないからちょっと寂しかったと申しましょうか。ああ、でもこんな事言ったらきっと怒られます!何か言い訳を・・・。

「嫌な事でもあったのか?」
「え?い、いいえ、そういう訳では・・・。」

ただでさえ忙しいリトに無駄な心配をかけさせる訳にはまいりません。

「あ、あの、気をつけて下さいね。」
「・・・無警戒・無防備の集大成のような奴に忠告されるとはな。」

ひ、人が真面目に心配してるのに皮肉な事言わないで下さい!!

 

 

皆様お久しぶりです。生きてました・・・<いっそ死んで来い>すみません、連載再開です。

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