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「きゃーーーっ!!」
ぽてり。 とりあえずお約束の如く叫んでは見たのですが、意外に落下の衝撃はなく、私は恐る恐る瞳を開きました。 「・・・こ、ここ何処ですか。」
「いきなり現れて言う台詞か。」
思いもよらず頭上から返答があり、ぎょっと頭をもたげる私。 「り、りりリトっ!?」 海の様な蒼い瞳を呆れたように細めて、大人姿のリトが私を見下ろしています。 「り、リトっ!!!」 ものすごい剣幕で詰め寄った私にやや引きつるリト。 「り、リトは隊長さんですか!?私の顔に見覚えはありますか!?」 そ、そそそんなっ!私が記憶を消したのは別の時空にいたリトであった筈なのにっ。やはり歴史とは一つの糸で繋がっていたのですか!? 「・・・冗談に決まってるだろう、馬鹿かお前は。」 あからさまに下らないと言うような不機嫌な声で言い放たれ、慌ててきょろきょろと周囲を見渡した私は、そこでようやく自分が多くの視線を集めている事、しかもリトの腕に抱き止められている姿勢に事に気がついたのです。・・・はははは恥ずかしいですーっ!! 「こ、ここは何処ですか、リト。」 羞恥に顔を赤らめたまま状況を説明すると、盛大な溜息が頭上から零れました。 「此処はロータス聖都だ。仕事が終わったら連れ帰ってやるから、待ってろ。」 私を地面に降ろしたリトは、投げやりに言い放ち人気の少ない方を指差しました。むぅ・・・リトは直ぐにそうやって私に姿を隠せって言います。たしかにこの姿は色々問題あるのかもしれませんけど。そうあからさまに邪魔者扱いされるとやはり寂しいですよ。 仕方ないので、ちょこんと石垣に腰掛け、ぼーっとしていると聞き慣れた男性らしい声に呼ばれました。 「ふふふ・・・憂いた顔して、どうしたのですか。」 振り向けば、絶世の美女と見まごうダカンさんが、妖艶な笑みを称えて立っています。過去から現代に戻ってきた筈なのに、この違和感の無さは一体なんなのでしょうか。あえて言うなら美人っぷりに拍車が掛かっているぐらいです。 「どうしたのですか?私の顔に何かついてます?」 慌ててふるふると被りを振ると、ふふふ・・・とダカンさんは何時もの様に怪しげ・・・あいえ意味深に笑いました。 「そういえば、この間は助かりました。貴方の血のおかげで、多くの者を救う事ができました」 穏やかに微笑み私の隣に腰掛けたダカンさんに穏やかな笑顔でそういわれ、私は思わず顔を赤らめました。 「あ、いいえっ!私の方こそお役に立てて嬉しかったですっ!私にできる事ならなんでも言って下さい。」 役に立たないのは、やっぱり辛いから。私が必要とされるなら、どんな形でも嬉しいのです。そう言うと、ダカンさんは優しく瞳をほそめ、私の頭をぽむぽむと撫でました。 「あの、ダカンさんと私、ずーっと前にお会いした事ってあります?」 他に話題も無いので、なんとなくそう尋ねると、ダカンさんは一瞬瞳を見開きました。 「あ、おかしな質問すみません。」 なっ、なななっ!?驚愕する私。ダカンさんの平然とした態度がますます理解できません。 「な、なな何故今まで何も仰らなかったんですか?」 飄々と答えられては、返す言葉もありません。そうですけど・・・確かにそうですけどっ!! 「そ、そそそそそれじゃあリトも。」 そ、そうですか・・・それはそうですよね、私が自分で記憶を封じてしまったのですから。
「ってユーカ隊長サン以外全員オボエテルよネ。」 がふっ!!突如すとんと目の前に降り立った人物に、私は思わず仰け反りかえりました。 「過去にソックリサンに会ったのは思い出してタケド、お人形さんは覚えてナイ見たいだったカラ、言う必要もなかったカナって。」 問い詰めると、飄々と答えるリアサーラさん。 「私は、お会いしたときに覚えていらっしゃらなかったようなので。過去に戻る前なのかと予測をし、言わないでおきました。楽しみを奪うのもなんですし。」 にっこりと微笑むダカンさん。 「・・・・。」 ルウェイさんは無口なだけでしょう。あぅぅぅっ!!恥ずかしいです。恥ずかしすぎます!!今まで私一人だけ何も知らずにいたなんて。そして皆して何も言ってくれなかったなんて・・・。酷いですーー!! 「まぁ、そう落ち込まず。キーリトスも、無意識になら貴方の事を覚えているようですし。」 涙に咽ぶ私の頭を撫でて、ダカンさんが宥めるに言いました。良く意味解らずきょとんと首を傾げる私。 「愛は障害がある方が燃えるというではありませんか。自分で障害を作るなんて、勇敢ですね。」 がふぅぅっ!!この方は・・・この方は一体何処まで知り尽くしているのでしょうっ! 「・・・楽しそうだな。」 三人の衝撃の告白に色々な意味で未だ打ちのめされていると、刹那首根っこを捕まえられ、ぐいっとダカンさんから引き離されました。 「リト!?」 な、なんで不機嫌なんですか。私の返事も聞かずにさっさと歩き出してしまうリトに、掛ける言葉が見つからず、借りてきた猫のように大人しくしていると、リアサーラさんが面白そうに言い放つ声が聞こえました。 「今度またタイチョーさんの知らない内緒バナシ、しようネ。」
「・・・。」 ぐはっ!リトリト、首がしまります!!
◆
帰り道、蛇の姿になった方がコンパクトだからと言った私の意見を無視して、リトはさっさと馬上に私を乗せると、自分も跨り鞭を撓らせました。抱きかかえられているようなこの姿勢、一見ロマンチックに思えるかもしれませんが、気恥ずかしさを考えている余裕など、この俊足で掛ける馬上ではありません。むしろ舌をかまないよう必死にしがみ付くだけで精一杯です。 ・・・リト、そんな急いで帰るなんて、やはり姫様に会いたいのでしょうか。 あぅ、なんだか考えがネガティブになってしまいますよ。
あっと言う間に王宮につき、へなへなと崩れ落ちた私に溜息ついて、リトは馬上から降りました。し、しんどいです・・・リト、よく毎日こんなハードな動物を走らせてますね。尊敬の念が沸きましたよ・・・あぅ、お、お尻痛いです。 「蛇の姿でポケットに潜り込んだ方がずっと楽ですよ。」 疲労のあまり、思わず口が滑ってしまい慌てて口を塞ぐと、小さく溜息ついてリトが呟きました。皮肉の音声ではない、素直な謝罪の言葉に思わず驚愕してしまう私。なんだか、さっきから変です。リト。
「リト、あの、怒ってますか。」 恐る恐る尋ねると、リトはふいっと顔を背けました。 「・・・何がそんなに面白いのか教えてもらおうか。」 リトの冷たい視線が、怖いと思うよりも可愛らしく思えてしまいます。 「成長してませんねー、リト。」 えっ・・・。 「い、一体どういう意味ですか・・・?」 あ、そ、そうですか。やっぱりそうですよね、私の事を覚えている筈ありませんよね。 「えと、送ってくださって有難うございました。私、部屋に戻りますね。」 小さく笑ってリトに背を向けると、突然腕を捕らえられました。 「待て。」 怪訝そうにリトを見上げ、言葉を待つ私ですが、リトはなかなか何も言おうとしません。 「り、リト・・・?」 な、なんだか沈黙が長引く度にリトの苛立ちが募っている気がして、恐る恐る声を掛ける私。 「・・・っ!!もう良い、俺には関係ない。」 けれど、それに耐えかねたようにリトは叫ぶと、踵を返して足早に立ち去って行ったのでした。 仕方なく、私も踵を変すと、不意にポケットの中から何かが零れ落ちました。
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