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「うっ・・・うーんっ・・・。」 目を覚ますと、なぜだか巨大な天蓋つきベットに寝かせられていました。 すみません、めちゃくちゃ美少女なんですが。そして視線があったと思った途端、美少女がにっこりと笑みを浮かべて、その次の刹那には、既に笑顔が目の前にまで迫っていました。 「こんにちはv」 うわ、笑顔まで可愛い・・・ってそんな事に感動している場合じゃありません。ここ二階なんですけれどっ!?い、今跳んで来ましたよねっ!? 「へぇー、キミかぁ。あのキーリトスが連れ込んだ女の子って。」 は・・・へっ!?品定めするような視線に思わず後ずさる私。な、なんだか美少女の笑顔が黒く見えるのですが、杞憂でありますように。 「んー、どこが特別なのかな。とりあえず脱いでみてよ。」 え、えーっと。話の関連性を全く見出せないのですが。 「見た目スコーピオンだよね〜、でも違う感じだし。一体なんなのかな。確かめさせてよ。」 キラリと美少女の目の奥が光った気がして、私はぞぞぞっと背筋を震え上がらせました。何かは解りませんが確実に身の危険を感じますっ!逃げなければと扉に視線を向けた瞬間、そのドアが、ガチャリと開かれました。其処に立っていたのは。 え、ルウェイさんっ!? 大分若いですが、こちらは一目で解ります。ルウェイさんです。背丈も変わらなく相変わらず目線で人を殺せそうな容貌をしております。推測では十年程さかのぼっている事を考えると、ルウェイさんはおそらく15、16歳ぐらいでしょうか・・・そ、その歳で凄まじい貫禄です。 けれど、それ以上に驚いたのは、ルウェイさんの腕に抱えられた幼女の姿でした。 「邪魔しないでよ、ルウェイ。何か用?」 だと思ったのはどうやら私らしく、金髪美少女は著しく幼女の姿を無視しきった台詞を陽気な声で言い放ちます。その途端、ルウェイさんの腕の中でぐずっていた幼女がぴくりと震えたようでした。そして、次の瞬間。 「こんのっ・・・くそったれぇろくでなしいいいいいっ!!」 鬼のような形相で飛び上がったかと思うと、こちらに向かって突進する幼女。 ドガガガガッ!! 動物的本能で咄嗟に避けた私と、難なく身を躱したリアサーさんの間に着地した少女の拳は、床を盛大に抉っていました。な、ななななっ! 「今日こそはとどめさすっ!ころすっ!ころしてやるぅぅぅっ!!」 憎悪の声で叫び、再び金髪美少女の懐へと飛び込んでいく小さな体。一体何がこの美貌の少女たちの間で起きたのか。お、おおおそろしや。遊んでいるかの如く幼女の攻撃を躱す金髪の美少女と、その度に破壊されていく部屋。思わず爆風に吹き飛ばされそうになっていると、ふと、背後から抱きとめられました。 「・・・。」 そのまま無言で私を背後にかばうルウェイさん。いや、有難いのですが、そんな事よりもこの喧嘩を止めなくて良いんですか。このままでは部屋というか屋敷が大破してしまいますよ。 「・・・大丈夫だ。」 どこをどう見てそんな悠長な事が言えるんですかーっ!! 「あやまれっ!あやまれこのあくまっ!!」 そう言って幼女は懐に手を突っ込むと、むんずっと何かを掴み出した。 「なーんだ、髪の毛切ってあげただけなのに。」 年端も行かない少女から出る言葉とは思いません。確かにお猿さんの様子は間抜けで憐憫を誘いますが、はたして家を壊す程の騒動に発展する程の価値はあるのでしょうか。 「しょーがないなぁ、フェルは。」 避けるのに飽きたのか、金髪美少女は、わざとらしく小さく溜息を吐くと、飛び掛ってきた幼女をきゅっと抱きとめるように捕まえました。そして、そのまま。
うちゅっ。
口付け。接吻。りっぷとぅりっぷ。 「あ・・・あ・・・。」 ろれつが回らないように、喘いだ後、じわあっと幼女の瞳に涙がびました。 「ひくっ・・・リア兄の・・・リア兄のどあほーーーっ!!」 盛大に泣き出した小さな女の子に、耐えかねて私はしゃしゃり出てしまいました。 「え、えーっと、大丈夫?」 初めて私の姿に気づいたのでしょう。女の子は大きな瞳をいっそう瞠目させて私を見上げました。 「飛鳥兄さま・・・!?」 え、男の人と間違えられた事は今まで一度も無いのですが。 もう本当に、これ以上の驚きは心臓がもたないかもしれません。 そこに立っていたのは、やさしげな眼差しをした少年。リトと同じぐらいの歳で、少しだけ長く伸ばした髪を蒼いリボンで結び、右肩に流しています。白シャツに黒ベスト、黒ズボンをきっちりと着こなし、銀縁眼鏡をかけたその顔つきはどこか大人びていました。そして、何よりも驚いた事。その少年は、黒髪に赤い瞳を持っていたのです。 「その人は違いますよ、フェル。」 ちょうど変声期のようで、少々掠れた声で少年が言うと、幼女はうれしそうに顔を綻ばせ、とたとたと立ち上がるとぴとりと効果音が付きそうな勢いで青年の体に抱きつきました。そしてその頭に飛び乗る猿。 「あまりフェルを苛めないでください、リアサーラ・・・兄上。」
は。
「あっかんべーだっ!」
和やかに行われる会話。全くついていけない私。 「り、りりりり、リアサーラさんなんですかーっ!?」 思わず指さして叫ぶと、今まで金髪美少女だと思っていた人物はにっこりと笑みを浮かべました。 「あれ?オレって有名人?」 いや、もうあらゆる意味で貴方は将来有名になりますとも。本当にあらゆる意味で。 「兄上は、客人の部屋で何をしているのですか。」 リアサーラさんの台詞に深々と溜息吐く黒髪の少年・・・やはり彼には見覚えがありません、そして小さな女の子にも。 「あ、あの・・・。」 恐る恐る声をかけると、少年ははっとしたように私に視線を向け、柔らかな物腰と丁寧な言葉遣いで話始めました。
「驚かせてしまい申し訳ありません。キーリトス兄上があなたを此処まで連れてきたのは本当です。兄上は、あまり人と関わろうとしませんから、僕たちが少し過剰反応してしまうのはお許しください。」 ひぇえええっ!む、昔から女の子と間違えられるのが嫌だったんですねリアサーラさん。でもその容貌じゃ無理ないかと・・・。 「・・・リアサーラはまぎれもなく男児です。お近づきにならないように。」 冷徹な突っ込みに口調を乱される事無く、むしろ笑みを浮かべて会話を続ける黒髪の少年。こ、この二人ってひょっとしなくとも仲悪いのでしょうか。 「あ、あたしはフェルシア、それでこっちがあきら君っ!」 自己紹介なら自分でする!と、身を乗り出したフェルシアちゃんが自慢げに猿・・・基半禿のあきら君を抱え上げました。その頭を、可愛がるように黒髪の少年がぽむぽむと撫でます。 「そして、僕は飛鳥と申します。」 ・・・あすか・・・飛鳥・・・名前まで、スコーピオンのような少年は、自己紹介をし、小さく敬礼した後、やんわりと上品な笑みを浮かべて私に尋ねました。 「それでは、貴方の名前をお教え下さいますか。」
勢いよく返事した私はその時まだ、このタイムトリップの重大さを何一つ解っていなかったのです。
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