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こんにちは、マリーンです。えー、始ってそうそう申し訳ありませんが、さっそく血みどろになっております。うぅっ、毎回毎回そろそろ流血ネタ止めていただきたいのですが。

「いたたっ・・・。」

バッサリやられた背中と、四肢の傷は、放っておけば治るのでしょうが。何分逃げる途中足をくじいてしまったみたいで、治癒完了するまでは動けそうにありません。骨の再生には時間がかかるのに・・・見つからなければ良いのですが。

そもそも何故こんな状況におかれているのかと申しますと、実は私、朝から転移魔方陣の特訓をしていたんです。ロータス大都で、もし私がもっと早く転移魔法を唱えられていたら、それからもっと遠くまで座標を定められるようになっていたら、もっとお役にたてていたと思うのです。本来転移魔法とは、世界を行き来する事もできる代物なのですから。

などと大きな目標を胸に特訓を開始したのは良いのですが、意気込みすぎてしまったのかうっかり暴発させてしまい、気がつけば城下町らしき場所まで飛ばされていたのです。
それからは、人に見つかって案の定スコーピオンだと追いかけられる羽目になった訳ですが・・・。変身したスコーピオンに勝てる訳無いのに、勇敢な人にも困りものです。
しかしロータス大都の事件以来、私の外見に対する人の態度は軟化したように思えたのですが、これでは最初の頃と同じです。はぁ・・・。それと、もう一つ解せないのは、先ほどから幾たび転移魔法を使おうとしているのですが、座標固定が上手くできない事。・・・うーん、暴発したショックでしょうか。

そうして、物思いに耽っていたため気配を感じ取れなかったのでしょう。
不意に頭上に影が落ちた事に気がつき、私ははじかれたように顔を上げました。

そしてそのまま、息すらも忘れて硬直する事となったのです。

サラサラの銀髪、海の色したどこか無機質にも思える深い蒼の瞳と、幼さを残す上品で繊細な顔つき。・・・リトそっくりな天使の如く愛らしい少年がそこに立っていたのです。私が全身から血を流していなければ運命的出会いの場面に相応しい絵図であったかもしれません。

「・・・。」
「・・・。」

驚愕に言葉も出ない私と、そんな私をじっと見つめる男の子。
可愛い、ものすっごく可愛いのですが・・・なんでしょう。気のせいか視線が冷たい気が。冷たいと言うより無機質な・・・はっ!?ひょっとして彼にもスコーピオンだと思われているのでしょうか。そう気づき、あわてて弁解をしようと身を乗り出した私よりも一歩早く、少年が口を開きました。

「・・・邪魔。」
「・・・えっ。」

私よりも幼く見えるやもしれない少年の口から出たとは思えない冷淡な単語に、思わず思考停止。

「通りたいんだけど。」
「は・・・えっ・・・。」

どこまでも無機質に、抑揚の無い声で放たれた台詞が理解できずキョロキョロ周囲を見渡すと、男の子の眉間に皺が刻まれました。うわ、怒ってます。怒り方までリトそっくりです。

「道のど真ん中で座り込むなっつってんの。」
「うわはいっ!すすすすみませんっ!!」

ううう・・・私の方が年上・・・に見えるのになんですかこの位置づけ。

「あ、あの動きたいのは山々なのですが、ちょっと今は動けないと言いますか。」

人間ならとっくにレイムのお迎えが来てもおかしくない傷ですし。というかここまで傷だらけな女の子が目の前にいて ここまで我関せずな台詞はどうかと思うのですが。
恐る恐る言い放つと、少年はようやく気づいたかのように上から下まで私の全身を眺めたのでした。気づくの遅すぎですっ!!普通血みどろの女の子が道端に座り込んでいたらもっと別の反応がありますよっ!無味無感情な所はリト以上かもしれませんこの子。
やはり親戚か何かでしょうか・・・。

「・・・。」

とか思っている内に、男の子があっさり踵をかえしてしまいました。さながら通れないんだったら別の道をゆくまでだと言うように。

「え、あ、あの待って下さいっ!どちらに。」
「お前には関係ない。」

ぐいー!

にべも無い一言を残して去ろうとする男の子のシャツを私は咄嗟に引き止めてしまいました。

「あ、すみません。血が・・・。」
「離せ。」

嫌そうに眉をしかめるさまといい、やはりリトそっくりです。

「あの、えと、ひょっとしてリト・・・キーリトス隊長の親戚ですか?」
「・・・。」

刹那、ピタリと少年の動きが止まり、次の瞬間、嫌悪と懐疑が入り混じった視線を向けられました。あぅ、怖い。

「・・・お前、一体何。なんで俺の名前を知ってるの。」
「・・・は・・・えっ・・・。えええええっ!!??」

 

今度は私が盛大に仰天する番でした。

 

 

「・・・ようするにお前は未来からやってきた精霊で、その未来で俺を知ってると?」
「はいそうです。」

奇想天外な話をし終えると、少年リトは驚く様子も無く、むしろ表情一つ変えずに私を見下ろしました。あまりに無感動な反応に、こちらが戸惑ってしまいます。この状況を受け入れるのに苦悩と困惑を極めた自分が悲しくなってくるのですが、どう考えてもそうとしか思えないのです。

「分った。」
「信じてくれるんですか!?」
「・・・一つだけ答えろ。お前は俺を隊長って呼んだけど、それは俺が騎士隊長になるって事か?」
「はい、そうですが。」

こくりと頷くと少年リトの瞳がすぅっと細められました。うう、天使の如く可愛い顔なのに態度がどうしてこうも威圧的なんですか。

「ならお前がいた未来は偽りだ。」
「え・・・。」
「俺は騎士隊長になる気なんてさらさら無い。」

予想もしていなかった台詞に、一瞬私は頭が真っ白になりました。
拒絶の言葉を吐き捨てたリトは、もうこれ以上話す事は無いと言うよう踵を反してしまいます。私は慌てて立ち上がりその背を追いかけました。

「り、リト待って下さいっ!」

呼んでも無視された上に足を速められてしまい、仕方なく痛む足を我慢して駆け出す。だって、もしかしたら私のせいで歴史が変わってしまったのかも。タイムトリップなんて全く予期してませんでしたし300年生きてきた中で始めての経験ですが、本能で歴史に干渉してはならない事は理解できます。リトにはなんっとしても隊長さんになってもらわなければ・・・。

「リトっお願いですから待ってっ・・・。」

刹那足に力が入らなくなり、私は体のバランスを崩しました。躓くだけなら大した問題では無かったのでしょう。・・・が、場所が悪かったのです。そう、なぜか下り階段のステップで、ガクリと足を踏み外してしまった私。下にはまだ下りきっていないリトの姿が。
リトが大人でしたら、あっさり受け止めてくれたのでしょうが。何せ今のリトは私と身長もさほど変わらない子供である訳でして・・・。

「きゃ、きゃああっ!よよ、避けてくださいーっ!」

叫んだのですが時既に遅く。
激しい音を立てて私はリトに覆いかぶさるように石段を転がり落ちたのでした。



五章開始。急な展開を見せる彼らに私がびっくり。<オイ
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