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皆様こんにちは。マリーンです。 「わー、本当にスコーピオンにそっくりだ。」 ひぃっ!すみません命が惜しいので最後のお二方の台詞は聞かなかった事にして下さい。 あ、申し訳ありません。混乱のあまり説明がおろそかになってしまいました。 さて、それでどうして私が兵員用の貨車にいるのかと言いますと・・・これは間違えてしまったからに他なりません。だって三つの列車、合わせて同じような貨車が十五個もあるんですよ。迷うのは無理ないと思います。ちなみに私が乗るべきだったのは荷物用貨車。リトから、水桶の中にでも入っていろとのお託を頂いたので。暗くて湿っぽい所が好きな海蛇の性質を良く解ってくれているのです。 「なぁなぁ、アンタって女神様の使者なんだろ?」 「何か芸やってみせてよ。」 精霊と芸人を混同させないでください。 「す、すみません、私車両間違えたのでこれで・・・。」 尋問と好奇の視線に耐えられず逃げようとした私ですが、扉の前に割り込んで来た兵士に逃げ道を塞がれてしまいます。 「ええっ、駄目駄目。ここにいろってお前、なんか涼しいんだもん。」 そう言った若い兵士は私をひょいと抱えあげて膝に乗っけてしまいました。 「そうそう、俺たちといたら隊長の話聞かせてやるぜ?」 全世界にこの思いを宣言した覚えはないのですが。何故見知らぬ方にまでばれてしまっているのでしょう。恥ずかしすぎます。 「あ、赤くなった。可愛いーっ!」 兵士の一人が溜息交じりに言い放つと同時に、車内が同意するように静まりかえりました。 「だって隊長って昔から姫様一筋だろ?」 自分を置いて進んで行く会話を聞きながら、私はちくちく痛み出した胸にそっと手を置きました。暑くて呼吸が苦しいです。 「王女様は有名なんですね。」 精霊らしからぬ気持ちを振り払うべく私が質問すると、答えてくれた兵士さんにつられて、全員が同意するように頷きました。確かにラメア王女さまは神秘的な水色の髪と、同じく空色の瞳。女神アスターナ様を思わせる麗しい外見をお持ちなのです。何故か人間体になると十四、五歳に見えてしまう私とは大違い。 「そもそも水姫祭ってどんなお祭りなんですか?」 どうもがいても氷枕と言わんばかりに囲まれた状態から逃げられそうに無く、私は諦めて話を聞くことにしました。 「あー、使徒様は知らないんだなぁ。この国には伝説があるんだよ。えーっと、どんな奴だっけ。」 さっそく覚えてないんですか。ぽりぽりと頭を描きながら、私を膝に乗っけていた騎士が助けを求めるように仲間を見渡すと、痩せた兵士の一人が語りだしました。 「昔、まだ人は小さな集落に住み、世界のどこにも国が存在しなかった頃。白き砂漠を旅していた男が、オアシスで美しい女性と出会うんだ。」 いや、まさか本当にそんな凡庸的な話だとは思わなかったんですけれど。 「それって本当の話なんですか?」 私が知る限りこの世界に降り立った精霊は私しかいないと思うのですが。他の逃亡者でしょうか。 「さぁなぁ・・・でも、王家が水色の髪と瞳を持っているのは水の精霊の血を引き継いでいるからだって噂だぜ。」 確かに精霊は属性に強く影響した外見を持って生まれてきます。だから私は全身黒い訳なんですが・・・言われてみれば王女様は水の精霊をなぞらえているかもしれません。 「それで代々水姫祭は、王女と婚約者の男が初代国王と結ばれた水の精霊を演じるんだよ。」 うわぁ・・・。心臓に悪そうです。主に私の。 「真似事じゃなくて本当にやる予定だったんじゃないのか?今年は。」 寝耳に水の話に思わず身を乗り出してしまう私。思わず心臓が飛び出しそうになってしまいましたよ。 「いや、なんでも延期になったらしいなぁ。なんでだろ?」 お互いを見渡して首を傾げる兵士の皆さんは誰も答えがないもよう。ほっと安心してしまった自分がやはり精霊らしくなくて、私は小さく悟られないように溜息を吐きました。 「まぁ、なんにせよ、隊長は俺たちの誇りだよな。」 思いふけっていた私は、聞きなれない名前にぴくりと顔を上げました。 「イグニード・・・?」 リトのお父さんがそんなに凄い人だったなんて知らなかったです。スコーピオン十匹をたった一人で相手するなんて、センチュリオンにさえできない事なのに。イグニード隊長さんの名を口にする皆さんの瞳は輝いていて、彼の雄姿ぶりを思わせました。親子揃って世界の勇者なんて、凄いです。・・・あれ?でも、リトの家に行った時はお会いしなかったような、それどころか、一度もお姿を拝見した事がないという事はひょっとして・・・。 「あ、あの、イグニード隊長さんって、今・・・。」 うーん・・・そ、それってあんまりリトと似てないんじゃ・・・。イグニード隊長さんの凄まじい武勇伝に、水を打ったような静けさになった貨車の中で、私は一人そんな事を思ってしまいました。だってリトの場合、勝ち目の無い戦いからは早々に撤退しそうですよ。それにどちらかと言えば肉体派というよりは頭脳派ですしね。そんなリトが騎士隊長になった理由は、やはりお父さんに憧れていたからなのでしょうか。いつか聞いてみましょう。それから、 リトはどうして結婚しないのでしょうか、その理由もやっぱり気になるので、聞いてみなければ。そんな事を考えながら、ゴトゴト揺れる貨車の中で私は 何時の間にやら眠りに落ちていったのでした。 |
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