| :2−9: |
|---|
砂丘に辿りついた時、俺は瞳を見開いた。黄金の砂地の上に拙く積み上げられた無数の石塊。不恰好ながらも墓標を意識したのだろう聳え立つ碑石の中に、マリーンはちょこんと座っていた。 ただじっとスコーピオンの残骸を埋葬した段丘を見つめるように、背後から表情は読み取れない。
項垂れたり憤慨したり、一通り百面相を終えると、マリーンは盛大に溜息を吐いた。 「リト?」 怪訝そうに首を傾げたマリーンの瞳は、何時もと変わらない色彩を湛えていた。 「!!??」 途端、さながら湯が沸騰するような勢いで飛びのいたかと思うと、マリーンがあたふたと両手で瞳を覆い隠した。 「え、えーっとですねこ、こここれは違うのですよっ!断じてっ!ええ、もうなんと申しますかお恥かしいながら砂嵐に巻き込まれてしまいまして。 「・・・・・落ち着け。」 息継ぎすら忘れ、支離滅裂になりながら苦しい逃げ口上を述べるマリーンにこれ以上は窒息しかねないと思い制止をかける。 「砂嵐に巻き込まれたわりには身だしなみが偉く整っているな。」 そしてなんだかんだ言いつつも揚足を取ってしまうのは性分なのだが。 「そ、それは、精霊の仕様ですっ!!」 呆れたように溜息を吐くと、マリーンはうっと呻いて俯いた。頬がこれでもかと言う程に紅潮している。まぁ、自分でも嘘見え見えだと解っていたのだろうな。 「・・・・罪悪感を感じてるのか?」 俺の台詞に、マリンは瞳を何度か瞬かせた後ゆるゆると頭を振った。 「・・・怖いだけです。」 私は、精霊ですから。とマリーンは告げた。
「リトは・・・・・・・・・人を殺した事はありますか?」 いきなりとんでもなく深刻な質問になったな。 「・・・・・ああ。」 しばらくの沈黙の後、俺は頷いた。残念ながら、魔物だけが敵である訳じゃない。 「リトは、痛くないですか?怖くないですか?私は、とても怖いです。命を背負う事が怖いです。だから、謝っていたのは、自分の為です。」 それから不釣合いな程大人びた笑みを浮べて、マリーンは言った。 「リト・・・・私、やっぱり帰りますね。」 余りにも呆気なく放たれた言葉の意味を、一瞬把握できなかった。 「・・・・追い出されたんじゃなかったのか、お前。」 最もな質問だったと思うのだが、マリーンは罰が悪そうに俯いた。どうやら図星だったらしい、だったら何故突然帰るとか言い出したのか。 「でも、私・・・・・もう、ここにいたって役に立たないですから。」 本当の事を言ったまでなのだが、マリーンは頬を膨らませると、子供のような仕草で憤慨した。 「そういう意味じゃなくって私、えと・・・先日の、スコーピオンの戦いにて力を使い果たしてしまったのです・・・。ですから、・・・もうあの様な事はできないんです・・・。」
口早に説明すると、マリーンはしゅんと項垂れた。 「・・・良いんじゃないのか?別に。」 俺の台詞に、マリーンはしばし沈黙の後、思いっきり呆けた顔で間抜けな声を漏らした。 「別に良いと言ったんだ。最初からお前の力なんか期待してない。」 心境複雑そうに大きく溜息を吐いて、マリーンは不安げな眼差しを俺に向けた。 「じゃあ、私・・・・まだ、ここに居ても良いのですか?」 今まで散々傍目も憚らずはた迷惑な台詞と言動で振り回しておきながら、一体何を今更。 |
|
ネット小説ランキングに入ってみました。宜しければ投票してやって下さい。 <<...TOP...>><<...BACK...>><<...NEXT...>> <<...HOME..>> |