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ちっ・・・・なんて、強さだ。 上位のスコーピオンともなると、人間の言葉を理解し、話す事ができる。魔物と共通の言語を持っている事も不思議だが、幾度か戦ったスコーピオンから、棟梁『朧』の名を耳にした事があった。 魔物の長だけあって、噂に違わぬ実力という訳か。 「・・・・悪くない。人間。」 お褒めに預かり有難う御座いますと言うべきか? 「が、飽きた。」 言うない否や突き上げられたのはもう一本の槍・・・・いや、紅の尾針。 凄まじい衝撃だった。なんて力だ。 「た、助けてくれっ・・!!」
「はやく、掴まってくださいっ。」 その中で途切れ途切れに聞こえる明朗な少女の声。 「きゃあ!、攻撃しないで下さいーっ!敵じゃありません本当ですーっ!」 頼むから喋ってくれるな気が散る! 「・・・・流石、体の一部という訳か。」 ねめつけると、能面のようなスコーピオンは瞳を細めた。それが優越なのか、怒気なのかは分らない。右手から剣が滑り落ち、鈍い音を立て砂地に落下した。その手の先、肱(かいな)全体に黒い尾が巻きつき、先端が首の根元、触れないギリギリの位置に当てられている。 「終だ。」 数歩近づき、赤尾のスコーピオンが宣ばいた。 「遺言は。」 どうやら毒殺する気も絞殺する気も無いらしい。また一歩近づき、スコーピオンは槍を構えた。 「無い。」 言い放ち、俺は盾から引き抜くように指を離した。防壁の無くなった左手から白銀の軌跡が生まれる。迷い無く劣弧状に描かれたそれはすり抜ける様にスコーピオンと俺の間を横切り、描き出されるように色濃い群青の液体が噴出す。俺は飛びのく様に距離を取った。 「!!?」 激痛であろうに声一つ上げず、だが驚愕に瞳を見開いてスコーピオンの棟梁は数歩後ずさった。俺は主を失って尚腕を締め付ける尾を剥し取り、地に投げ捨てる。びくびくと動く様がなんとも気持ち悪い。 「・・・仕込み刀か。」 右、左。双方の手に構えられる銀剣。守備が一切許されない攻撃のみの剣技、『二刀流』。 「・・・悪くない。」 胸から大量の鮮血を流し、スコーピオンは唇を歪ませた。なんとも薄ら寒い笑みに似た表情が浮かぶ。渾身の一撃だった。土壇場の返し刃が、一度の戦いで二度通用する可能性は無きに等しい。だが、尾を無くし、重症を負わされながらも目の前のスコーピオンからは焦りどころか、愉悦すら感じられる。 「リトっ!!尾がっ!!」 嫌な汗が背筋を流れた刹那、叫びが聞こえた。体を押しやる衝撃があり、続けざまに不快なくぐもった水音が耳に届く。 「い・・・・たぁーーーいっ!!!」 俺にしがみ付くつきながら気の抜ける抗議の声と共に、マリーンが涙目で顔を上げた。衣装の背が引き裂かれ、焼けた様にどす黒く濡れている。一体何が・・・いや、それよりも 「痛い所じゃないだろ!!」 傷口に触れようとする俺から離れ、マリーンは額に汗を浮かべながら頭を振った。 「これくらい、直に治ります。」 確かに、そう言う傍から血は止まっており、傷口が目まぐるしい速さで治癒されて行く。 「・・・再生能力だと?」 今までに無い驚愕を含んだ声が紅尾のスコーピオンから漏れた。その手には切られた筈の尾が握り締められている。あれが、マリーンを襲ったのか?だが、切り落とされて尚操る事ができるとは・・・・。そう考えた先、息が止まった。尾が引き寄せられるかのごとく切り取られた先へと戻り、皮膚が奇怪なまでの速度で合わさって行く。 「貴様・・・我が同胞ではあるまい・・・何者だ?」 体が再生を続ける中、スコーピオンが重厚な口調で問うた。 「人に聞く前に自分から名乗るのが礼儀では?」 珍しく強気だな。しかも偉そうだ。スコーピオンがすっと瞳を細めた。 「我が毒を体内に受けながら、威勢の良い事だ。」 なんて無茶苦茶な論理だ。呆れるべきか感心するべきか解らない。 「蛇・・・・・?そうか、その姿と能力。・・・・汝も『逃亡者』か。」 『逃亡者』。 |
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