Ice


 また今年も私の家はクリスマス仕様と化した。
 ここはつまらないから嫌いだ、外に行きたいと泣く幼い君を宥めるために、はずみで約束してしまったのがきっかけだったと思う。
 毎年毎年似たような飾り付けなのに良く飽きないな。
 私の偽らざる本音だが、上機嫌の君にそんなことを言うほど愚かじゃない。
「ねえシリウス、ちゃんと神様は見ていてくださるわよね?」
「何を?」
「この家や…私達のことをよ」
 天を仰ぐ君の肩に積もる雪。
 この時期に決まって降るそれが、ただ白くて美しいだけのものだったら、どんなに良かったことか。
「何故、そう思うんだ?」
「んー…いつもホワイトクリスマスだから、かな」
 いつもだと飽きちゃうかも…なんて贅沢かな? 君は苦笑を浮かべる。
「雪は天からの贈り物でしょ。クリスマスには雪が似合うってこと、きっと神様はご存知なんだわ」
 私は神に仕える身でありながら、畏れることも、呪うこともない。
 私自身の生死さえ、特に思うところはない。
 そもそも人並みの感情に振り回されて生きていたのは、いったい何時のことだったろう? 分からない。
「どうかしたの?」
 いぶかしむ瞳は、私以外の人間を殆ど映したことがない。出来れば私のような者など映すことなく、君には違う人生を歩んで欲しかったのに。
「シリウス…?」
「…そろそろ帰ろうか、ヴィネア」
 雪が降ればクリスマスは近い。今年こそ、君は還るべきところへ導かれるかもしれない。
 私はそのあとのことだけを考えていればいい。
 君も、私も、すべてはあるべきところに。ただ、それだけだ。


END